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  • 執筆者の写真二又 俊文

(解説)ドイツ特許法改正 New § 139 of the German Patent Act (Patentgesetz)

更新日:2021年6月27日

June 25,2021 ドイツ特許法(German Patent Act)は既報のように下院(Bundestag)で可決されたが、上院(Bundesrat)でも可決されようとしている。今回の改正の最大の焦点であったドイツ特許法の中でも根幹のである第139条(Automatic Injunction自動侵害差止条項)であったが、今回の改正についての解説が有力専門誌JuveとLexologyにそろって掲載されている。趣旨はすでに本ブログでも伝えた内容と同様にSEPの場合には実務上改正による変化なしとするものである。

振り返れば改正への背景としては、2018年からフォルクスワーゲン社(Uwe Wiesner氏)をはじめ車業界のロビー活動が行われ、差止権の行使を制約するための強力なProportionality(比例原則)が主張されてきたことがある。しかし、改正案では「信義則」という文言が加えられただけで、従来からの権利者と実施者との間でもともと斟酌されていた原則を確認するにとどまっている。比例のためのテストは行われるとしても差止が制約される場面は著しく限定的な場面となると解釈される。さらに侵害者に対する侵害補償請求についてもあらたに文言が加わったことも指摘できる。

Photo: Unsplash Leon Seibert

1)JUVE誌解説(6月23日付け)

法律専門誌JUVEは”German patent judges predict few changes to automatic injunction” ドイツの知財裁判官たちもほとんど変化がないとみているとの解説記事を寄せている。


2)Lexology誌解説(6月22日付け)

今回の文言改正は人命や生命に関わる設備などでは適用される場面がありえるが、SEPでは適用されることはないと説明している。

It is unlikely, however, that the new law will have an impact on evolving case law on standard-essential patent (“SEP”) litigation.

なお、今回の改正の焦点であった比例原則(Proportionality test)についても次のように解説を加えている。

New § 139 para. 1 of the German Patent Act (Patentgesetz) now reads:

The [injunction] claim may be excluded to the extent that the claim due to the special circumstances of the individual case and the requirements of good faith would lead to disproportionate hardship for the infringer or third parties, not justified by the exclusive right. In this case the infringed party shall receive a reasonable monetary compensation. The claim for damages [. . .] remains unaffected.


3)改正条文の詳細

今回の139条改正について改正点に関する対比表が下院で発表されているので、その当該箇所の翻訳を載せる。

改正案議案書(含む対比表)

P.61(139条1項第3文及び第4文)変更対比表

  • (139条1項第3文)差止請求権が例外的に特許権侵害において制限され得ることを明文化した第3文に、信義則の明確な考慮が追加された。これによって、差止請求権を制限するための正当とは認められない損害があるのか否かの問いを評価するにあたって、特許権者が当然に有する利益をも含めて全体的な比較考量が求められることが明確になった。

  • (139条第4文)この修正に伴い、差止請求権が特許権侵害にあたって例外的に制限された場合のための特許権侵害者に対する侵害の補償請求は、強制的なものになった。用語「合理的」は、補償請求の額が更に合理性の条件の下にあることを明確にするために規定の本文の中に置かれている。

  • 請求の額は裁判所が衡平の考慮に従って、侵害された者の特許権が差止請求権の制限によって制限される事情を考慮して決める。その際、補償としては通常の場合少なくとも権利が契約上の認められる場合に補償として合理的である金額が 、特許権者の保護すべき価値を例外的に明らかに欠いていない限り(例えば、本来の目的から外れた方法で、差止請求によって達成され得る生産停止の威嚇の可能性を金銭目的に利用するためだけに取得された特許の場合)、支払われるべきである。しかし、個々の事情に応じて、例えば、侵害者が事前に十分な注意を払って特許の状況を調査しなかった場合、より高額な補償も検討される。

(仮訳は高橋弘志氏のご提供による)

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