(中) 中国 国際標準を活用した知財強国へ ISO 56005の全土展開
- 二又 俊文
- 2023年5月29日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年5月31日
5月22日に中国の国家知識産権局(CNIPA、日本の特許庁にあたる)と工業情報化部(日本の経済産業省と総務省を合わせたような省庁)が連名で発表した「イノベーションマネジメント・知的財産権に関する国際標準の試験的実施の組織化についての通知」をJETRO香港が報じている。国際標準を活用した知財強国へのしたたかな取り組みとして注目される。
今回の動きは上記リンクを参照いただきたい。
<当ブログ解説>
国際的にも知財マネジメントはきわめて難しく高度のスキルを必要とする。しかし、中国は知財強国を実現するためイノベーション創出のツールとして次の時代をささえる「小さな巨人」を養成しようとして取り組んでいる。その取り組みのなかで国際標準化に取り組み、世界のトップクラスの知財マネジメントのフレームワークを活用しながらISO56005として完成させ、それをさらに中国全土の「小さな巨人」候補に試そうとしている。ISO56005づくりには日本や欧米も参加した「イノベーションマネジメントー知財マネジメント・ガイダンス」である。この狙いは:
①組織におけるイノベーションを支援するための知財戦略の策定、
②イノベーション創出のプロセスにおける体系的な知財マネジメントの確立、
③効率的な知財マネジメントを支援するための一貫した知財ツールや手法の適用。
にあるとされている。
知財強国をめざす中国には標準強国という目標も同時に保有する。その中国がISOという国際標準化の場でも世界の専門家の知恵を集約し、知財マネジメントというコアの部分の国際規格として成立させたのがISO56005である。そしてその成果を今さらに中国全土の「小さな巨人」候補で実証実験しようと取り組もうとしている。このISO56005は世界の知財専門家の貢献もあり完成度も高く、その内容に高い評価が寄せられているが、中国がいち早くそれを実験の場に持ち込んだことは興味深い。そこには単に標準化を「技術を広げるためのツール」という狭い範囲で理解するのではなく、標準化を事業の拡大と事業基盤づくりに具体的に活用しようとする中国のしたたかな姿が透けて見える。
参考記事
ISO56005についてブログ筆者(二又、高田、松本)は「国際標準と知財戦略との新たな統合モデル~ISO56005標準化過程から見える中国の戦略」として日本知財協会(JIPA)知財管理誌 2022年1月号(Vol.72, No.1, p.5-18)に寄稿しているのでPDFを添付する。

Photo: Unsplash, Li Yang
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