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(英) 英国高等法院がGlobal FRAND料率をOptis v. Appleで判示 UK High Court

更新日:2023年6月12日

先月10日に[2023] EWHC 1095(Ch)として下されているが、今回コンフィデンシャルな部分を削除したものが公表されている。Judge Marcus Smithの判決文を添付する。


オレンジ色ハイライトは筆者が新たに加えたものであるが、黄色の削除はOPTISから、緑色の削除はAPPLEからの削除が認められた原文での箇所である。以下の本文解説の数字は判決での当該ページを示す。今回の判決は5月10日に[2023] EWHC 1095(Ch)として下されているが、今回当事者削除申請が認められ削除されたVersionが公表されている。


英国においてOptisはAppleに対して4件の特許侵害訴訟(Trial A, B, C, D)を提起していたが、2021年9月27日の判決でAppleはOptisに敗訴しており、①来年決定されるFRANDレートを受け入れるか、それとも②UK市場から撤退するかの選択を迫られていた。それが今回審理を経てGlobal FRAND Rateが決定されたものである。5回を超えるhearingなどが行われた慎重な審理で判決文も285ページと大部である。 Global FRAND料率を判示するのは英国と中国だけであるが、英国では今回の判決は2020年8月26日のUnwired planet v. Huaweiの最高裁判決[2020]UKSC37(注)、本年3月16日のIDC v. Lenovoに続く3番目の判決である。


その結果APPLEはOPTISに過去分のリリースを加えてGlobal Royalty総額で$30.78Mil(約43億円)を支払えと判示した。もっともこの金額はOPTISにとっては予想を大幅に下回る不本意な金額で、英国が決してSEP権利者にとって有利な訴訟地とは言えないとの評価が広まっている。


判決文からの主な概要

FRANDレート算出までの検討

双方から多くの証人が証言を行った(Fig. Table2)、Comparable licensesから”Unpacking”[54]という作業を経てFRAND Royaltyを求める作業が行われた。Apple側からはLump sumの箇所に対する批判が多かったが[56ii]、裁判所は14の要素から総合的にFRAND Royalty算出の検討を行った(p.35)。裁判所は特許ポートフォリオの価値を算出するにあたり、validity, essentiality, im portanceの3つの側面から検討したが、3番目のimportanceの面では算出に難儀している(p.41以下)。ポートフォリオのデータベースとしてはOptisはPA Consultant, AppleはInnography社を使った(p.61)。しかし、両者の主張するSEP分母数には大きな開きがあった(p.67)。AppleはSEP数を大きく主張し、Optisのシェアを下げさせる戦術をとった。さらに必須特許率も問題となったが、判事はOptis特許はessentialityで平均以下ではないかとの心証を得た(p.90, 93)。

最高裁Unwired判決との比較検討も行われ、Birss framework(p.101), The Birss One-third Rate(p.102)などが今回の判決にも適用されている。


判決はAppleの主張したSSPPU 論を認めず(p.109, 119), Apple側証人のShapiro教授の”upper bound”to the FRAND rate(いわゆる累積ロイヤリティ)論も実現可能でないとして安易な運用に批判的であった(p.126)。


その上でcomparable licensesの検討を詳細に積み重ねている(p.128以下)。Optisが9件、Appleが14件のcomparable licensesをそれぞれ提示するが(p.131以下)、このあたりの算出過程詳細は判決文では守秘削除が多く読みづらい。比較可能契約の”unpacking”(読み解き)の詳細はp.159以下。ロイヤリティの払い方による違い、クロスライセンスによる減額、過去分への扱いの3点が算出に影響を与える(p.161)と述べている。さらに両社の2013年から2017年の交渉過程でのやり取りを考察して(p.170)、両者の提示レートの進展を表7に整理している(p.188)


交渉過程の検討

Optisの主張したAppleはunwilling licenseeであるを判事は認めなかった(p.198)。むしろprocess-driven companyと好意的に見ている(p.198). したがってAppleの交渉態度をHold-outとは認めなかった。同様にOptisにもHold-upがなかったと判示した(p.203)

さらにAppleの主張するOptisの支配的地位の濫用も認めなかった(p.206)


ロイヤリティの検討:FRANDとは

英国最高裁UP v. Huawei判決でBirss判事が判示したロイヤリティレートは0.062%であったが、このUPのポートフォリオとOptisのポートフォリオを比較し(p.210)、別のアプローチ方法を主張したOptisの主張を退けた(p.213)。

最後にFRANDの検討を行い、Non discriminatoryの検討(p.225), Fair , Reasonableの法的検討(p.229)を続け、FRANDの価値とはvalue to Implementerであって、value to consumerではないと判じた(p.237)。


OPTISのうけとるロイヤリティの計算(全ポートフォリオ)

特許総数を22000件として、Optisシェアを全体の0.38% OR 0.61%と算出(p.240)。その差はOPTISの特許数を83件とみるか、135件と見るかの違いから生ずる。今回のセルラーコネクションによりもたらされる価値の総額をAppleのcomparable licenses契約(19件)から算出している(p. 241)が、詳細な計算表には守秘削除で読みづらい。


ロイヤリティ計算のまとめとして、判決は一括支払いを合理的と考え、AppleがOptisに払うべきロイヤリティ(0.61%)は年間US$5.13Mil(約7億円)と判示した。そして、一括支払いであれば5年分の支払い総額$25.65Mil(約35億円)とした(p.265)。さらに過去分のリリースを加えて総額で$30.78Mil(約43億円)をアップルは支払うべきとした(p.266)。


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