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UK控訴審 Ericsson v Lenovoでレノボにinterim licenceを認める Lenovo prevails over Ericsson in UK-CoA

更新日:3月8日

LenovoとEricssonの4G5Gをめぐる係争は16年の長きにわたるものであったが、本年米国ITCでLenovoがEricssonの特許を侵害していると認定され、同社製品に差止のリスクも増す不利な状況であった。しかし、並行訴訟の英国控訴院(Arnold LJ)では一転して暫定ライセンスを受ける権利(Interim Licence, Declaratory Relief)が認められ英国では勝訴した。Lenovoはこの裁判所の判決はSEPをめぐる訴訟における画期的な判決であると述べている。


今回は英国控訴院のArnold判事がリードするInterim licenceをめぐる3つの事案について、英国在住の日高誓子英国弁護士(Gowling WLG)のコメントinputを織り込みながら整理する。

判決原文とExective summaryも提供いただいたのでPDFを添付する。






英国控訴審[2025]EWCA Civ 182, 28, Feb 2025 Lenovo, Motorola Mobility v. Ericsson


英国においてInterim licenceによるFRAND訴訟の早期解決を望む控訴審Arnold裁判官は今回のEricsson v. Lenovo判決でInterim Licenceの付与について先行事案と共通の判断を行なった。すなわち実施者が英国裁判所が決めたGlobal FRANDライセンスに署名することを約束している場合、他国訴訟を提起し、差止を請求することはETSI IPRポリシー(6.1条)に従い、SEP保有者が実際にFRANDライセンスをオファーする義務の違反となるとした。(オファーすると約束した時点でSEP保有者の義務は充足される)


英国におけるこれまでの3つInterim Licence事案:

  1. Panasonic v Xiaomi  :

  原審ではXiaomiの求めていたInterim Licenceの抗弁は認められなかったが、控訴審Arnold裁判官はその判断を翻した。すなわちPanasonicは 中国、ドイツ、UPCで訴訟を開始する一方で両当事者は英国の裁判所に対して、裁判所が決定したライセンスを締結するという無条件の約束を与えていた。控訴院はPanasonicがSEP権利者としてETSIのFRAND義務に反していると判断した。Panasonicの立場におかれているwillingなライセンサーはGlobal FRANDをアクセプトしている実施者に対してInterim Licenceを提供することに同意すると宣言した。


  1. Alcatel & Nokia v Amazon: 

    Panasonicの事案とは異なり、Nokiaとその子会社Alcatelは英国においてSEPをAmazonに行使しておらず、FRAND(又はRAND)ライセンスの設定の請求も行わず、かつ

英国裁判所が決めたRAND条件のライセンスをAmazonにオファーするという約束も行なっていなかった。しかし、AlcatelはSEPでないビデオコーデックNEP( Non Essential Patent)をAmazonに権利行使していた。これに対してAmazonは英国裁判所が決めたRAND条件を受け入れると約束した上、NokiaがNon-Discriminatoryの条件を満たすSEPとNEPを含んだ包括的なライセンスオファーを提供する必要があると主張した。AmazonはNokiaの他国訴訟でのSEP行使と差止請求を回避するためInterim licenceの宣言を求めるpleadingsへのamendを申請し、Arnold裁判官はこれを認めた。なおこの場合の標準規格はITU所管でスイスが準拠法となっていた。


  1. Ericsson v Lenovo

  原審(Justice Jonathan Richards 2024年11月20日)ではInterim Licenceの抗弁は却下されていたが、今回の控訴審Arnold判事はそれを覆しLenovoの請求を認めた。その理由として、Arnold裁判官は、Lenovoが英国裁判所が決めたGlobal FRANDライセンスを受け入れると約束しているにも関わらず、より有利な条件を獲得するため米国EDNC地裁、US-ITC, ブラジル、コロンビアなどにおける訴訟でLenovoに強制する行為はETSIのFRAND義務に反すると認定した。Ericssonの立場に置かれているWillingなライセンサーはLenovoにInterim licenceを付与すると宣言した。また、Ericssonの主張した国際礼譲の主張は受け入れなかった。もし、EricssonがInterim licenceをLenovoに付与するとすれば、金額はEricsson提示の9桁(数百億円)とLenovo提示の8桁(数十億円)の中間値がInterim LicenseのFRAND料率として、後日英国裁判所が決定するロイヤリティで最終的に調整されるようにすると判示した。

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(ブログ筆者 考察) Interim Licenceについて

Arnold裁判官の考えるInterim Licenceの意義を推しはかると、FRAND交渉を尽くしても合意に至らない交渉不調の場合には、それを解決するのは裁判所が極めて重要な役割をはたすことができ(判例§ 25)、すみやかな解決にはFRANDレートを早期に決めることが重要である(§21)と考えている。そこで裁判所はFRANDをプロセスと考え(§20)、裁判所に付託されたときから両当事者の態度がFRANDであるかを判断し(付託前の行為についてはその是非を問題としない)、実施者が裁判所が決めるFRAND料率を受け入れる場合にはInterim Licenceの請求を認める方向に動く。


Arnold裁判官は判決のなかで"Such behaviour is not to be condoned"とロイヤリティーの

精算ですべて解決するInterim licenceを受けようとしないエリクソンの行為を厳しく批判したが、権利者からはむしろ16年にわたるLenovoのHoldout行為こそが批判されるべきだったとの主張が残った。

判決文§110 ”This statement makes two complaints about Lenovo’s behaviour. The first complaint is that Lenovo have engaged in hold out for 16 years. Let it be assumed that Ericsson are right that Lenovo engaged in hold out prior to October 2023. Such behaviour is

not to be condoned. But the position now is that Lenovo have undertaken to enter into

a cross-licence on the terms determined by the English courts to be FRAND.(略)

Thus Lenovo cannot be accused of holding out now.


このInterim licenceの受け入れを権利者に強いる手法は、英国FRAND訴訟で初めてとられたもので、この手法に対しては「英国法制帝国主義」jurisdictional imperialism 、裁判管轄をめぐる争いを煽る、あるいはComity国際礼譲に反するとの批判もある。これに対してArnolod裁判官は判決文§155で"A critic might argue that, to that extent, a degree of jurisdictional imperialism is already hard-wired into the English courts’ approach to these issues..The declaration sought by Lenovo is less intrusive into the jurisdictions of foreign courts and tribunals than a global FRAND determination."と反論している。


またInterim Licence事案は本来手続上の争いで短期間に判示されるが、特許侵害に関する本訴はそれぞれ別に存在しており,本訴はSTAYするような状態となる。手続上の争いの結果で当事者同士の合意形成が強要され和解が成立することもある。


(補足)

  1. 英国における本訴のGlobal rateを決める期日は来月4月が予定されている。

  2. 米国ITCは来月4月にエリクソンの主張する差止に最終判決を下す予定。

 
 
 

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