(中)Huawei(華為)攻勢拡大:Xiaomi(小米)に対し特許侵害行政裁決を請求 Huawei v. Xiaomi in China
- 二又 俊文
- 2023年3月27日
- 読了時間: 3分
更新日:2023年4月5日
米中貿易摩擦など経営上の「冬の時代」にあり、危機感を強めている華為(Huawei)は昨年後半から自社の知財ポートフォリオを活用し、知財攻勢を世界中で強めている。たとえば欧州ではモバイル特許でStellantis(マンハイム地裁、ミュンヘン地裁), WiFi-6特許でNetgear(デュッセルドルフ地裁), Amazon(ミュンヘン、デュッセルドルフ、マンハイム地裁), AVM(ミュンヘン地裁)を提訴している。
このなか、あらたな動きとして中国でXiaomi(小米)を相手に特許侵害行政裁決を求めた。
中国では特許権侵害訴訟の解決のためには裁判所による侵害訴訟(司法ルート)と、行政機関による行政処理(行政ルート)の2つが現在あり、重大な特許権侵害訴訟(専利行政法執行弁法第5条)で迅速な行政ルートの利用が近時拡大している。同法では、行政処理申立制度手続きは3ヶ月以内に完了し(注)、侵害を認定された場合には地方政府の知的財産権局から侵害行為の停止命令が出されると規定する。
(注)専利行政法執行弁法(国家知的財産権局令第71号) 第21条「立件の日から3ヶ月以内に事件を終結させなければならない。事件が特に複雑で機関を延長する必要がある場合は特許業務管理部門の責任者が承認しなければならない」。特許権侵害紛争行政裁決事件処理指南(国家知的財産局2019年12月26日公布)第1節参照
今回、華為は行政裁決により小米の製品の差止を迅速に行い、一気にライセンス契約を締結しようしていると見られる。
今回は中国企業にこのルートが使われたが、中国市場に輸出している外国企業にもこの中国独自の手続きが専利の分野でも活用できることには留意する必要がある。
中国の業界情報筋によれば、華為が小米にライセンス料を要求しているのは5Gを対象とするもので、昨年発表した「定価」一台あたり$2.50相当と見られる。小米にとってはこれを受け入れた場合経営上の打撃が相当大きい(純利益の1/4が吹き飛ぶ)と言われる。
(参考記事)————————————————————
JETRO北京のCHINA IP Newsletter 2023/3/27号 より引用(原文のまま)
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ファーウェイ、国家知識産権局に特許侵害行政裁決を請求 シャオミ相手に
通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)がこのほど、自社が保有する4件の特許について、「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」に基づき、国家知識産権局(CNIPA)に行政裁決を請求したことがわかった。4件の被請求人はいずれも、スマートフォン大手の小米科技(シャオミ)である。CNIPAは、ファーウェイの行政裁決請求を受理したことを公表している。中国専利審査情報照会システムによると、係争中の4件の特許は2007年4月27日から2014年3月12日までの間に出願されたもので、4件の法的状態はいずれも「有効」となっている。
これらの権利の内容を見ると、4G LTE関連の通信及び情報システム業界における標準必須特許と、携帯電話カメラやロック解除技術に関連する特許が含まれている。
ファーウェイとシャオミの今回の紛争について、上海大学知的財産権学院の陶鑫良名誉院長は取材に対し、「ファーウェイが今回、特許侵害訴訟ではなく、行政裁決の手段を利用したのは、最終的に特許ライセンスの目的を達成するために選んだ可能性が高い」と分析した。
(出典:中国知識産権資訊網 2023年3月23日)
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(注)特許侵害行政裁決については、「特許侵害訴訟における行政処理の利用マニュアル」BLJ法律事務所 遠藤誠弁護士、日本機械輸出組合(2021年3月初版)P.8, P.131, P.134, P.143を参照させていただいた。
また条文については「中国経済六法」日本国際貿易促進協会(2020年版、2021年〜2023年増補版)も合わせて参照した。
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