(中国)「知財権強国建設綱要2021-2035」発表 China's 2035 plan to be a powerful IP nation announced.
- 二又 俊文
- 2021年9月26日
- 読了時間: 3分
長らく待たれていた中国の2035年知財強国への道を述べる「国家知識産権戦略綱要」が公表された。綱要は「2035年までに、知的財産権の総合競争力において世界トップレベルになり、中国の特色ある、世界水準の知的財産権強国を基本的に完成させる」とし、「社会主義現代化のための知的財産権制度の構築」、「世界一流のビジネス環境を支える知的財産権保護制度の構築」、「革新的発展を促す知的財産権市場運営メカニズムの構築」、「人々にとって便利で有益な知的財産権公共サービスシステムの構築」、「知的財産権の質の高い発展を促進する人的・社会的環境の構築」、「グローバル知的財産権ガバナンスへの深い関与」の6つの面から知財強国建設の重要課題をまとめている。人民日報(日本語版)9月23日。http://j.people.com.cn/n3/2021/0923/c94474-9899872.html
今回の注目される綱要について、原文と日本語仮訳(JETRO)とJETRO香港松本部長の解説と合わせて転載させていただく。
原文
日本語仮訳
(松本解説メモ)
今回発表された綱要は2008年に制定された「国家知識産権戦略綱要」を受け継ぐ長期政策目標である。内容は十四次五カ年計画綱要や中央政治局第25回集団学習における習近平発言をはじめとする最近の知財政策を踏襲した内容となっている。個人的に注目するポイントは以下の通り。
【新技術・ビジネス対応関連】
・ビッグデータ、AI、ゲノムなどの新領域について新たに知財立法する
・インターネット、データ、オープンソース、アルゴリズム、ビジネスモデル、AI創出知財について規則や法体系を検討・整備する
【知財活用関連】
・知財取引価格の統計公表システムを構築する
・知財金融を穏やかに発展させる
【知財司法関連】
・インテリジェント法院を設立する
・国際知財訴訟地として選ばれるようにする
【標準・競争法関連】
・専利と国際標準の制定との効果的な結合を推進する
・知的財産権濫用行為を規制する法律制度及び知的財産権に関連する独占禁止、不正競争防止などの分野の立法を充実化させる
【その他】
・数値目標(2025年まで)として、十四次五カ年計画における目標である高価値専利に加え、「知的財産権使用費輸出入総額3500億元(約6兆円)到達」が盛り込まれた(2020年は3194.3億元)
・知財公共サービスの提供を強化する(知財データの標準化など)
・知財宣伝メディアとしてSNSやショートビデオなど新メディアを活用する
・知財のグローバル・ガバナンス体系の改革/に積極参加する
-----引用終わり-----
なお、今回将来への重要課題の一つと挙げられた「グローバル知的財産権ガバナンスへの深い関与」に関しては、一連のASI(訴訟禁止命令、いわゆる「禁訴令」)での国際対立などの動きも関連をしていると思われる。中国の法律でのグローバル大国を目指す戦略については、日経ビジネスの記事「中国が世界で強める法律戦 」2021.9.22号 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/world/00422/ が詳しい。
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