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  • 執筆者の写真二又 俊文

中国6G報告書発表 China 5G+ Report by CAICT

更新日:2021年5月13日

5Gの次6Gのゲームはすでにスタートしている(中国では5G+、日本ではBeyond5Gと呼ばれる)。中国はその5G+の戦略的意義とSEP戦略を分析している。

JETRO香港の松本要副所長より情報提供あった現地情報をもとに解説する。中国工業・信息化部(工業情報化部)の傘下研究機関である中国信息通信研究院(CAICT)から3月下旬に出された報告書は中文のみであるが、部分的に仮訳・解説を加える。


報告書の内容から抜粋。

  • (本文1-3)5GにおけるSEPのラントスケープは変化しない。すなわちETSIで標準必須宣言された特許を上位10社が90%以上保有。2020年7月現在、中国企業5社(華為、ZTE、大唐、OPPO、Vivo )は37%の標準必須宣言を行なった。

  • (本文1−2)5Gにおいては(通信規格に加え)マルチメディアの標準化も重要であるが、そこではH.264/H.265/H.266と並んで中国が制定した AVS 規格技術も採用されている。H.266 は 2020 年 7 月に正式にリリースされる予定であるが、ここでは華為、テンセント、バイトダンス、アリババ、メディアテック、DJI などの中国企業も積極的に規格の策定に関わっている。また、ITU には 並行して サムスン、クアルコムのEVC 規格もあるが、華為も参加している。

   ※本文3-3でも5G+マルチメディア動向を述べており、中国がこの分野を注視していることが窺われる。

  • (本文2-1-3)地域性、ASI(訴訟禁止命令)に関して

知財権は属地的な性質のため、FRAND原則が定められたSSOのIPポリシーではなく、その解釈は関係国の法律に準拠されるべきである。中国特許に関連する問題に関しては中国の裁判所の裁量が尊重されるべきであり、中国の領土における中国の特許に関連するライセンス料は中国の裁判所によって決定されるべきである。

  • (本文2-2) SEPの価値

SEPの価値を引用率で見るべきでない。

  • (本文2-3) 各国におけるSEP関連政策動向

米欧に続いて、日韓における政策動向も紹介。特許庁 2018 年「標準必須特許ライセンス交渉の手引き」と並んで、経済産業省の2020年4月「マルチコンポーネント製品に係る標準必須特許のフェアバリューの算定に関する考え方」 を取り上げている。

  • (本文3-1)中国企業とNPE訴訟

訴訟件数においてNPE 訴訟件数が増大。2011 年の 9件から 2020 年には 126 件(Darts-ip 2020/10)と増加傾向にある。華為、ZTE、Lenovo、 Haier、Hisense、DJI、OPPO などが被告となった。全世界の NPE訴訟の 80%以上を中国企業が占める。

  • (本文4-1-2)ロイヤリティレート

現在の司法実務では、ケースバイケースで証拠に応じて、「比較可能なライセンス契約」、「トップダウン」、またはその両方のアプローチを組み合わせてライセンス料を算出している。

  • (本文5-2)ライセンスルール

イノベーションの確保、産業エコシステム、消費者の利益を顧慮したシステム構築が基本であるが、5G+では5Gと同じライセンスルールが適用される必要はない。特許の属地性を重視。独占禁止法の遵守が必要。またパテントプールではその透明性、公開性を重視、詳細が開示されなかればならない。特許の質については総合的な評価システムを構築すべき。

  • (本文5-4)中国知財裁判制度の拡充。

中国のことは中国で決められる司法体制確立が重要。ASIはさらに推進されるべき。中国判例がグローバルルールとして認められるような体制も拡充させる。例えば中国司法判断のロイヤリティがグローバルレートとなることなど。


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報告書からの部分仮訳

<報告書の概要>

5G は、現在の世界的な技術革命の新ラウンドの焦点であり、新時代の投資を促進し、産業のアップグレードを実現し、新しい経済を発展させるための新しいチャネルとプラットフ ォームであり、各国のデジタル経済戦略における優先的な開発分野となっている。統計によると、中国における標準必須特許紛争の 96%近くが通信分野に集中している。5G+産業にお けるモバイル通信技術の普及に伴い、通信分野の標準必須特許紛争が徐々に 5G+産業にも波 及し、世界的に標準必須特許関連の訴訟が相次いでいる。 したがって、5G 及び関連産業における標準必須特許の応用環境を研究することは、中国の 5G+産業の発展にとって大きな意義がある。

本レポートでは、標準必須特許の創出、評価、適用される政策の変更から始まり、5G+産業 における標準必須特許に関わる 3つの重要な分野、すなわち、移動体通信、スマート・ネットワーク・ビークル、マルチメディア分野を組み合わせ、それらの特許ライセンス環境の 現状を深く分析し、標準必須特許のライセンスルールの最新の発展傾向をまとめ、最後に 5G+産業における標準必須特許の良好な行動のルールを提案する。具体的には、各産業の発展特性に合わせた個別のライセンスルールの制定を検討したり、パテントプールの良好で健全な発展を促したり、知的財産権関連制度の指導的役割を十分に発揮することを含む。



<報告書の目次>

一. 5G+産業エコシステムの発展と知的財産権の関係 ...

 (一) 5G 新技術が可能にするより多くの応用シナリオ ...

 (二) 様々な規格が 5G+業界の高い需要を効果的に促進 ...

 (三) 5G+産業における標準必須特許は依然として注目 ...

二. 標準必須特許の創出、評価、適用...

 (一) 標準必須特許の創出 ...  (二) 標準必須特許の評価 ...  (三) 標準必須特許の適用 ...

三.5G+業界標準必須特許ライセンス環境 ...

 (一) モバイル通信領域 ...  (二) スマートネットワーク車輌領域 ...

 (三) 5G+マルチメディア領域 ...

四.5G+ 標準必須特許のコア・ライセンス・ルールに関する最新動向 ...  (一) 合理的なライセンス料の算定には依然議論の余地がある ...  (二) 差止命令の適用には、交渉当事者の具体的な行動を考慮する必要がある ...

 (三) 独占禁止法は、標準必須特許の引き続きライセンス行為を規制する ...

五.5G+ 標準必須特許のための適切なライセンスルールの構築 ...  (一) 基本原則 ...  (二) 異なる垂直産業に適応した個別のライセンスルールの検討 ...  (三) 5G+産業のパテントプール・ライセンスモデルの健全な確立と運営の規範化 ...   (四) 知財関連制度の指導的役割のさらなる発展 ...

----------仮訳終わり--------------------------------

Photo: Unsplash Hanny Naibaho


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