中国最高裁のパテントプールレート管轄判決に対する米意見書 US Amicus Brief on Pool FRAND Rate setting by Chinese Supreme Court
- toshifutamata0
- 2024年12月1日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年12月2日

Photo: Shutterstock
パテントプールではパテントプール発起人・運営者のもとに多くのライセンサーが参集し、プールライセンスの条件を決定する。ライセンシーにとってはワンストップライセンスで多くのライセンス交渉を避けることができるメリットはあるが、そのロイヤリティレートが高額であることに不満の場合もある。しかし、パテントプールには多くのライセンサー、ライセンシーが関係するだけに実施者がそのレートを司法の場で争うとなるとさまざまなハードルが待ち受ける。
パテントプールのグローバルFRANDレートが司法の場で争われた近時の事案は3件ある。2件は英国裁判所での事案で、1件は中国最高人民法院の判決である。
英国の二つの判決はパテントプールのレート決定に関する裁判管轄について被告の主張を却下したが、中国最高人民法院はパテントプールレート決定に関する裁判管轄を認め、そのレート決定を深圳中級人民法院に付託した。中国事案では米国パテントプール運営者Access Advance(AA)はその後の深圳法院での判決を待たず、独自にTCLを含む17社と和解を行った。
この中国最高人民法院の判決文は現在未公開であるが、米国知財界の重鎮のRader元FTC判事、David Kappos元USPTO長官、Mark Cohen教授が中国最高人民法院にAmicus Brief(似)を送達し、「中国の裁判所が特許プールの固有の制限と、裁判所の決定が他の管轄区域のアプローチとどれほど矛盾するかをさらに考慮すべき」「中国企業のグローバルパテントプールへの参加が増えているなかプールに対する管轄権に対するより慎重なアプローチは求める」と述べている。意見書英文のリンクはhttps://chinaipr.com/wp-content/uploads/2024/11/en-tclvaa-amicus-.pdf
米国Mark Cohen教授のブログ記事
3つのパテントプール関連SEP判例
(1)英国控訴審 Vestel v. Access Advance(AA) and Philips
トルコの製造機器メーカーVestelがAAのHEVC.H.265プールロイヤリティ(一台あたり$1.33)がMPEG-LAのプールロイヤリティ(一台あたり$0.20)に比べて高額であると訴えたもの。控訴審はVestelの訴えを却下した。
UK Court of Appeal, [2021]EWCA Civ 440, 26/03/2021
LordJustice Nugee, Lady Justice Elisabeth Laing and Lord Justice Birss. Vestel v. Access Advance LLC (前HEVC Advance LLC) and Philips
(2)英国高等法院 Tesla v. Interdigital
TeslaはAvanciの5GプールプログラムのグローバルFRANDレートの決定を求めて提訴したが、AvanciはSEP権利者でなく、訴えの利益はないとしてAvanciに対する裁判管轄を認めなかった。さらにAvanciプログラムに権利者として参加しているInterdigitalのパテントプールにおける権利者の手続き保証の欠缺を理由にInterdigitalに対する本件の裁判管轄も否定した。
[2024]EWHC 1815(Ch), 15 July 2024, Hearing dates: 23,24 May, 4 June 2024
この事案はTeslaが控訴しており、そのhearingは12月2日から予定されている。したがって控訴審判決が出されるのはおそらく2月・3月ぐらいとなろう。
なお、本事案については中所昌司弁護士(長島・大野・常松法律事務所)が判例解説をLES Japan Newsに掲載されたのでそのPDF版をご好意で添付させていただく。LES Japan News Vol.65 No.3 (2024年9月号)掲載
(3)中国最高人民法院 TCL v. Access Advance
米国Access AdvanceのパテントプールのグローバルFRANDレートの決定に関する裁判管轄が争われていたが、最高人民法院は中国の裁判所がパテントプールのグローバルFRANDレートを決定できると判示した。
これについて最高人民法院の判例は公開されていないが、三つのブログ記事がそれを伝えている。
IPFRAY 2024年6月27日付 "Chinese courts will now set global FRAND rates for patent pools at implementers’ requests: Supreme People’s Court ruling"(英文)
微信 2024年6月27日付「最新!中国法院对“外国专利池”全球费率纠纷拥有管辖权」(中文)
別の微信 2024年7月18日付 「最近,专利池全球Frand费率又支棱起来了」(中文)
なお、最高人民法院判決のあと、AAはHEVCのライセンシー349社のうち、TCLおよび深圳の17社と和解を行った(2024年11月3日)
以下 中所弁護士からの本事案に対するコメント
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英国では、SEPの権利者及び実施者のいずれも、相手方を被告として、裁判所に、SEPのグローバルFRAND料率の決定を求めることができる。従前はSEP権利者がこのような訴訟を提起することが多かった。もっとも、2023年に英国高等法院が2件の事件(InterDigital v. Lenovo事件及びOptis v. Apple事件)において定めたグローバルFRAND料率は、比較的、実施者に有利であると評価されるものであった。そのため、2023年以降は、実施者がグローバルFRAND料率の決定を求める訴訟(free-standing claim)を提起する傾向にある(なお、Panasonic v. Xiaomi事件の2024年10月3日付け判決において、英国控訴院は、Panasonicが英国裁判所にグローバルFRAND料率の決定を求める訴訟を開始したことを理由の1つとして、暫定的なライセンスに関するXiaomiの申立てを認めた。したがって、SEP権利者は、英国でグローバルFRAND料率の決定を求める訴訟を提起してしまうと、裁判所が最終的な料率を定めるまでの間、暫定的なライセンスに応じざるを得なくなり、その結果、英国以外の裁判所における差止請求が阻害される可能性が生じることになる。)。
本稿で紹介した事件においては、実施者であるTeslaが、パテントプール(プラットフォーム)であるAvanciを被告として、Avanciの5Gライセンスプログラムの全SEPを対象とするグローバルFRAND料率の決定を求める訴訟を提起していた。英国高等法院は、2024年7月15日付け判決において、Avanci自体はSEPの権利者ではないため、法的権利に関する現実の紛争が存在しないことを理由として、Avanciに対する請求に関する管轄を否定した。仮に、Sisvelのように、自らもSEPを所有するパテントプール運営者を被告とする請求の場合には、この判決理由は適用できないと考えられる。
もっとも、この判決において、高等法院は、SEP権利者であるInterDigitalを被告とする、Avanciのプログラムの全SEPを対象とするグローバルFRAND料率の決定を求める請求についても、InterDigital以外のライセンサーの手続保障等を理由として、管轄を否定した。そのため、仮に、Sisvelを被告とする請求であっても、InterDigitalを被告とする請求と同様に、管轄が認められない可能性はある。
Teslaは、上記判決に対して控訴しており、2024年12月2日から2日間、控訴院でのヒアリングが予定されている。
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以上 中所弁護士の記事引用終わり、LES記事はPDFで添付
その他関連記事
(参考) UPC ミュンヘンLD, NEC v TCL
UPC_CFI_153/2024 2024年10月2日
NECはTCLをHEVCの特許侵害で提訴しているが、TCLは特許無効の訴えを起こした。これに対してAccess AdvanceはNECを支持するため訴訟参加を申し出たがUPC裁判所によりパテントプール運営者は法的利害関係人として参加を認められた。
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