top of page
検索

欧州委員会 TRIPS協定に基づき、中国SEP判例への情報開示請求発出 EU requests for information to Chinsese SEP cases

更新日:2021年7月8日

SEP係争で注目の動きはASI(Anti-Suit Injunction, 裁判提訴禁止令)である。特許侵害を提訴された中国メーカーが中国の裁判所で「禁訴令」を得て、外国メーカーの権利者が海外で訴訟を提起すること、あるいは執行することを禁ずる命令を発出してもらう動きを取るというのが昨年8月以来頻発している。しかし、この一連の動きに対して、ドイツの裁判所だけでなく、EUもWTOへの情報開示請求という新たな動きを7月6日とった。


Mark A. Cohen(Berkeley Center for Law, Senior Fellow)氏のブログ(7月6日付)がその第1報を伝えている。


7月6日EUの発出されたWTOへの情報開示要請書https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/SS/directdoc.aspx?ilename=t:/IP/C/W682.docx&Open=True.)これによれば、EUはこれまで10年にわたり中国知財の近代化に貢献してきたが、判決の執行やロイヤリティレートに関する最近の相次ぐASI判例について情報開示要請をTRIPS協定63条3項にもとづき発出した。その背景として中国のSEP判例で情報の開示が限定的で、中国はいま初期判例のつみあげ(後続の判例へのガイドラインとなる)に熱心なことに注目しており、たとえばASIのように先鋭的な事例が相次いで登場していることがあげられる。特に重要判例の以下の4つのうち、中国の判例WEBサイト "China judgements online"で公開されているのは1.のみ。


情報提供の対象となった判例はEU要請書によれば以下4つの判例。いずれも「禁訴令」Anti-Suit Injunctionに関係するもの

1. Conversant v. Huawei 最高人民法院判決 2020.08.28

 最高人民法院の十大判決の一つに挙げられており、「典型案件」と位置づけられ、最高人民法院知識産権法廷裁判要旨にも取り上げ上げられている事案。中国で初めての「禁訴令」(Anti Suit Injunction)をConversantに命じ、ドイツデュッセルドルフ地裁の2020年8月27日判決の執行を禁じる命令で、従わなかった場合には日毎の高額罰金を定めたもの。

Conversant v Huawei - Supreme People's Court Huawei Technologies Co., Ltd., Huawei Terminal Co., Ltd., Huawei Software Technology Co., Ltd. and Conversant Wireless Licensing Co., Ltd. on confirmation of not infringing patent rights and settling a series of disputes on standard-essential patent licensing [Supreme People's Court (2019) Supreme People's Court 732, 733 , No. 734 Civil Ruling) 华为技术有限公司、华为终端有限公司、华为软件技术有限公司与康文森无线许可有限公司确认不侵害专利权及标准必要专利许可纠纷系列案〔最高人民法院(2019)最高法知民终732、733、734号之一民事裁定书〕


2. OPPO v. Sharp 深セン中級人民法院 

2020年10月16日 異なる”裁判地でのanti‑suit injunction" と"anti-anti-suit injunctions" とがぶつかりあった最初の事案。

深セン中級人民法院に裁判管轄権の存在を認めた。「最高人民法院による特許権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」が引用されている。

※シャープは2020年1月東京地裁、2020年3月ドイツで提訴していた。


3. Xiaomi(小米) v. InterDigital 武漢中級人民法院

2020年9月23日判決が、InterDigitalは中国以外での差し止め訴訟(この場合にはインド)提起を取り下げることを命じ、武漢中級人民法院がロイヤリティレートを定めるとした。InterDigitalがこれに反した場合 百万RMBの罰金が毎日賦課される。


4.Samsung v. Ericsson 武漢中級人民法院

武漢中級人民法院はエリクソンに対して、前例のXiaomi(小米)v.InterDigital と同様に米国テキサス東地裁での訴訟に対する禁訴令を発出した。


----------------------------------------------

<参考> TRIPS協定6 第5部紛争の防止及び解決

第63条 透明性の確保

(1) この協定が対象とする事項(知的所有権の取得可能性,範囲,取得,行使及び濫用の防止)に関し加盟国が実施する法令,最終的な司法上の決定及び一般に適用される行政上の決定は,各国政府及び権利者が知ることができるような方法により当該加盟国の国語で公表し又は,公表が実際的でない場合には,公に利用可能なものとする。各加盟国の政府又は政府機関の間において有効なこの協定が対象とする事項に関する合意も公表する。

(3) 各加盟国は,他の加盟国からの書面による要請に応じて(1)に規定する種類の情報を提供することができるように準備する。加盟国は,知的所有権の分野に関する特定の司法上若しくは行政上の決定又は2国間協定がこの協定に基づく自国の権利に影響を及ぼすと信じるに足りる理由を有する場合には,当該特定の司法上若しくは行政上の決定若しくは2国間協定を利用すること又はこれらの十分詳細な情報を得ることを書面により要請することができる




 
 
 

Comments


© SEP Research Group in Japan created with Wix.com

bottom of page