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(英)Philips v. Oppo 中英でのASIを巡る対立 ASI Conflict between Philips and Oppo in UK

更新日:2022年7月13日

Philips v. Oppo(他Oneplus, Realme)でPhilipsの主張認められ、予防的AASI発出

Koninklijke Philips N.V. v Guangdong Oppo Mobile Telecommunications Corp. et.al [2022] EWHC1703 (Pat)

英国高裁はPhilipsの主張を認め、Philipsの3G, 4GのSEPのグローバルFRAND料率を設定できることを確認した上、Oppoが中国において並行訴訟で求めるであろうASI(中国語で禁訴令)に対してQuia Timet法理にもとづきAASIを予防的差止命令として5月4日発出した。


なおこの申立はEx Parteでなされたので(Oppoに通知せず、Philipsが一方的に裁判所に請求)、英国の訴訟手続上、Inter Partes(両当事者を含めた)のヒアリングが6月28日に行われ、Ex Parteで求めたAASIを改めて審理し、その主張が追認された。


本事案に先行する2つの2021年事案

Unwired Planet v Huawei およびConversant v Huawei & ZTEの英国最高裁判決(2020.08.26)で英国がグローバルFRANDレートを決める権限を有すると判示されたが、その後、①Philips v XiaomiにおいてXiaomiが、②Nokia v. OppoにおいてOppoがそれぞれ英国でのSTAYを求める申立(Case management stay)を行った。両件で英国高裁は中国側の申立を却下し審理継続を明確にした。

① Koninklijke Philips N.V. v Xiaomi Inc & Ors [2021] EWHC 2170 (Pat)。その後PhilipsとXiaomiとは2022年3月11日和解し、各国での提訴をすべて取り下げた。http://www.fosspatents.com/2022/03/philips-xiaomi-settle-standard.html

② Nokia Technologies OY & Anorv OnePlus Technology (Shenzhen)


Co., Ltd & Ors [2021] EWHC 2952 (Pat)。NokiaはOppoとのライセンス契約が切れ、2021年7月はじめからOppoを各地で提訴した。対してOppoは同年7月13日に重慶中級人民法院に提訴し、FRAND交渉義務違反、グローバルFRANDレートを出すことを求めた。英国では6月に控訴審でのヒアリングが行われたが、7月11日控訴審は申立を却下した [2022] EWCA Civ 947

https://www.bailii.org/ew/cases/EWCA/Civ/2022/947.html


本事案でのPhilipsの主張

Oppoが中国の裁判所にASIを申請することで、英国の裁判所によるSEPの行使とSEPポートフォリオのグローバルFRANDライセンスの条件の設定訴訟が妨害される恐れがあり、OPPOは中国での並行訴訟で有利なライセンス条件を確保できる。Philips にはImminent and Real riskがある。そこでQuia Timet(予防的差止命令)の発出を求める。


Philips が求めているAASIの内容

「当該訴訟に干渉する,または当該訴訟を抑制、防止、取り下げに至るような救済を他国(注:中国に限らない)の裁判所に求める事を禁止する」,(“…must not seek any relief from a foreign court or tribunal that would interfere with, restrain, prevent, require the withdrawal of, or seek to penalise the Applicant for pursuing the Claim herein, or taking any step in relation to this Claim...”)


Oppoの主張

· Philipsがex Parteで取得したAASIは広範すぎる。中国の裁判所が命じるあらゆるFRANDに関する判決・命令の行使が阻止されてしまう効果がある。合法な並行訴訟が阻止される事になる。Oppoが中国裁判所の判決を行使する様な証拠はないし、現時点では中国で起訴していない

· たとえ中国でグローバルFRANDライセンスの条件の設定の訴訟をし、英国と中国の裁判所間で異なったFRANDライセンスの条件が決められたとしても、英国裁判所が中国裁判所の判決を否認するのが正当だ。AASIを使って中国での合法な並行訴訟を阻止する事は不当であり、国際礼譲に反する。

· OppoはASIを請求する意思がないし(注:のちにその意思が代わる可能性はある)、ASIをPhilipsに最低7日間の予告期間与えずに請求をしない約束をPhilipsにするオファーをしている(Philipsはその程度の約束は不十分という立場でいる)。 


英国高裁判決

· 過去のOppo v Sharp 事件では、Oppoは中国でグローバルFRANDライセンスの条件の設定を求めつつ、Sharpによるドイツでの訴訟を妨げるASIを獲得し有利なライセンス締結を図る事に成功した。和解に成功した実質的な理由の一つがASIであった事がOppoのプレスリリースに述べてある。もしOppoが中国でASIを申請する予定がないのであれば、なぜ、将来ASIを申請する権利を留保しているのであろうか?中国の裁判所で与えられたASIによって当該訴訟追行不能になればPhilipsは英国の特許権の行使が出来なくなり、修復不能な重大な損失が発生する。ASIを防ぐためAnti-Anti-Suit injunctionを命令する事が妥当だ。

· 中国裁判所にグローバルFRANDライセンスの条件の設定を求める提訴自体は合法でありうるが、それをAASIによって防ぐ事は重大で注意がいる。Philipsもヒアリング中に認めたように、合法な訴訟によって得られた判決を行使する事を阻止するような命令は国際礼譲に反し、してはならない。 

· 中国以外での管轄で訴訟をし、当該訴訟を妨げるような事をする恐れに証拠はないので、当該AASI命令も中国裁判所でASIを申請する事を防止する効果のものに限定する。  

· Oppoが差し止め(AASI)の対象になるのを避けたいのであれば、その変わりにASIを中国の裁判所に申請しない事を当該裁判所(英国高等裁判所)に約束する事を認めなければならない。



本記事は日高誓子英国弁護士(Gowling WLG, London)の情報に二又が加筆した。

 
 
 

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