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(中国)EUがWTOに提出したSEP判決の開示請求書に中国が回答 China Responds to EU Articles 63 Request

更新日:2021年9月10日

JETRO香港の松本部長情報からいくつかのリンクをご紹介いただいたので、参照しながら本件について改めて整理しました。


SEP係争で注目の動きはASI(Anti-Suit Injunction, 訴訟提訴禁止令、中国語では禁訴令)である。中国の裁判所が禁訴令を発する事案が多発し、それを重要視するEUはWTOにTRIPS協定63条3項にもとづく、情報提供要請を7月6日に提出した(注1)。該当する4つの判決はASI(禁訴令)がポイントとなった“Conversant vs ファーウェイ(華為)”, ”OPPO vs Sharp”, “小米 vs InterDigital”、”Samsung vs Ericsson”の判決で、判決文などの開示を8週間以内に行うことを求めた。4つの判決のうち中国側から開示されているのは“Conversant vs 華為”のみであった。TRIPS協定63条(注2)は紛争の防止と解決に関する条項で、その第3項は透明性の確保のための手続きが定められている。このEU請求に対する中国の対応が注目されていた。


中国側の回答書(9月7日付け)はわずか1頁で、WTO加盟国には聞く権利はあっても、”there is no such obligation under the TRIPS Agreement for China to respond”(中国には回答義務はない)。さらにEUが指摘した4件は参考のための事件であり、普遍的に適用可能な法的効力を有さないと回答した。この対応について、中国事情に詳しい米国の中国知財専門家のMark Cohen氏を始めさまざまな批判がでている。https://chinaipr.com/2021/09/08/china-responds-to-eu-article-63-request/


(注1)7月6日EUの発出したWTOへの情報開示要請書(原文リンク)https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/SS/directdoc.aspx?ilename=t:/IP/C/W682.docx&Open=True.

(注2)翻訳版:「TRIPS協定 第5部紛争の防止及び解決 第63条 透明性の確保」

 第1項 この協定が対象とする事項(知的所有権の取得可能性,範囲,取得,行使及び濫用の防止)に関し加盟国が実施する法令,最終的な司法上の決定及び一般に適用される行政上の決定は,各国政府及び権利者が知ることができるような方法により当該加盟国の国語で公表し又は,公表が実際的でない場合には,公に利用可能なものとする。各加盟国の政府又は政府機関の間において有効なこの協定が対象とする事項に関する合意も公表する。

 第3項 各加盟国は,他の加盟国からの書面による要請に応じて(1)に規定する種類の情報を提供することができるように準備する。加盟国は,知的所有権の分野に関する特定の司法上若しくは行政上の決定又は2国間協定がこの協定に基づく自国の権利に影響を及ぼすと信じるに足りる理由を有する場合には,当該特定の司法上若しくは行政上の決定若しくは2国間協定を利用すること又はこれらの十分詳細な情報を得ることを書面により要請することができる。

 
 
 

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