(米国)速報 HTC v. Ericsson控訴審でエリクソン勝訴(原審での陪審によるFRAND判断に瑕疵なし)5th.Cir. vindicates Ericsson
- 二又 俊文
- 2021年9月5日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年9月8日
2021年8月31日第5巡回区控訴審判決。エリクソンはHTC(宏達国際電子)に勝訴。
控訴審は原審の陪審審理においてHTCの主張する瑕疵は見られず、エリクソンのオファーがFRANDであったと判示した。一審は陪審員がFRANDレートの算定の妥当性を判断した初めてのケースであったが、今回のFRAND判定は米国における今後のSEP裁判に新たな流れをつけるものと言える。なお、本事案は特許法上の争いではなかったため、CAFCではなく第5巡回区控訴審で審理されている。
HTC Corp. et al. v. Telefonaktiebolaget LM Ericsson et al., No. 19-40566 (5th Cir. Aug. 31, 2021) 控訴審判決文は https://www.ca5.uscourts.gov/opinions/pub/19/19-40566-CV0.pdf
本事案はテキサス東地裁からの控訴審にあたる。Eastern District of Texas USDC No. 6:18-CV-243 。HTCはテキサス東裁判所の陪審への判断指示に瑕疵があると主張して控訴した事案である。(テキサス東地裁判決)2019年5月23日判決 一審判決文は https://us-arbitration.shearman.com/siteFiles/26598/2019.01.22%20HTC%20Corporation%20v.%20Telefonaktiebolaget%20LM%20Ericsson,%20No.%206-18-....pdf
今回の控訴審判決のなかでは、FRANDレートは特許法上の賠償額算定基準で決めれられるものでなく、契約法上の互いの義務にもとづき算出されるとした点を確認した。そのなかで控訴審はHTCが主張したSSPPU(最小部品単位にもとづくレート算出方法)や非差別条項(N.D.)の厳密な適用も認めなかった。
(P.9)Ericsson’s FRAND commitment “is ‘governed by the laws of France,’ and is ‘solely [] contractual [in] nature.’” Whether Ericsson’s offer complied with the terms of its agreement with ETSI is thus a matter of French contract law. See, e.g., Microsoft Corp. v. Motorola, Inc., 795 F.3d 1024, 1040 (9th Cir. 2015) (explaining that a similar case was “not a patent law action” but a breach-of-contract case);
(p.10) a breach-of-contract case involving a breach-of-FRAND claim “is not a patent law action.” Microsoft Corp., 795 F.3d at 1040.
非差別条項の適用についてFRANDレートは単一でなく、常に最恵国待遇条件が適用されるとは限らないと判示した。But ETSI has already rejected a most-favored-licensee approach and chosen to give patent holders some flexibility in coming to reasonable agreements with different potential licensees.
【両社の交渉過程】
エリクソンとHTCは過去に3回(2003年、2008年、2014年)のライセンス契約を締結していた。2014年のライセンス契約ではHTCはエリクソンに一時金$75Milを支払い、さらに端末一台あたり$2.50のロイヤリティを支払う内容であった(判決文P.4)。2014年契約が終了を迎える2016年に両者は更改交渉を開始したが、4G端末に対してエリクソンは$2.50を提示し、これをHTCは拒絶し代わりに$0.10を提示した。数日後の2017年4月6日、HTCはエリクソンがFRANDレート提示義務に瑕疵があるとして確認訴訟を提起した。訴訟がPendingされるなか、同年6月にエリクソンは1%のロイヤリティで、一台最低$1、最大$4 capをHTCにあらたに提示した。
その後HTCはさらに確認訴訟を提起した。裁判のHTCはFRANDレートは部品レベルで算出され、かつApple, Huawei, Samsungの条件とも同じ条件で提示されなければならない(非差別条件N.D.)を主張した。これに対してエリクソンは提示レートは、HTCと類似状況にある企業への提示レートと同様であると主張した。(to level the playing field among competitors )
【原審テキサス東地裁審理での論点】
陪審員の判断基準(jury instructions)の内容が論点となった。判断基準について、エリクソンはよりgeneralなFRANDレート設定方法を主張したのに対して、HTCは部品レベルを算定基準とすることと(SSPPU)、非差別条件の適用(N.D)を主張した。双方の主張に対して原審は“Whether or not a license is FRAND will depend upon the totality of the particular facts and circumstances existing during the negotiations and leading up to the license. Ladies and gentlemen, there is no fixed or required methodology for setting or calculating the terms of a FRAND license rate.” としてライセンス交渉の総合的判断と、FRANDロイヤリティは単一ではないことを判断基準として出した。地裁が結局陪審員に求めた判断は3点。(1) “whether HTC prove[d] by a preponderance of the evidence that Ericsson breached its contractual obligation to offer HTC a license, on FRAND terms, to Ericsson’s cellular standard-essential patents”; (2) whether Ericsson had breached its duty of good faith negotiations; and (3) whether HTC had breached its duty to negotiate in good faith. 陪審員はエリクソンのオファーはFRANDであると認め、交渉においてもFRAND義務違反がないと判断した。HTCはこれを不満として控訴。
【控訴審でのapportionment(ロイヤリティ負担の分配)の論点】
特許法上の裁判でCAFCはjuries must get instructions to base royalty awards on the incremental value of an invention – not the value of the whole standard, nor any increased value that an SEP gains from being in the standard. と判示しているが、原審はこの
appointmentの考え方を採用せず、陪審員への判断指示には含めなかった。控訴審はこれを支持し、その理由は特許法が本事案に適用されるべきではなく、契約法が適用されるべきであるからと述べた。apportionmentに理解を示していた控訴審の3人の判事の一人Higginson判事も今回はReasonable royaltyを算出する上でapportionmentの部分での指示に改善の余地はあったが、それが審理の結果に深刻な影響をあたえるような瑕疵(reversible error)ではなく、HTCの主張は審理の過程ですでに織り込まれていたと述べている。

Photo: Wix
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