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(英) FRAND料率に関する英国高等法院判決(1)  InterDigital v. Lenovo in UK (1)

更新日:2023年3月28日

インターデジタル社(IDC)とレノボ社(Lenovo)とのSEPを巡る交渉は2008年から足掛け14年にも及ぶ長期交渉だった[判決文154]。IDCはいわゆるNPEで開発とライセンス供与のみで事業を行う米国企業、Lenovoは携帯端末事業を2014年にMotorolaから、PC事業をIBMから買収した中国企業。その交渉過程ではFRANDロイヤリティレート算出と過去分をどこまで遡るかが争われた。FRANDロイヤリティの算出については27本の比較可能なライセンス契約が双方から提出され詳細な検討が行われた。興味深いことに2017年のLGへのライセンス契約(3G,4G,5G)がもっとも適切な比較可能な契約とされ、一台あたり$0.175のグローバルFRANDレートが算出されている。このレートは過去分のみならず将来分にも適用されるべきと判示されている。


3月16日付け判決(原文)


FRANDロイヤリティ料率を定めることは裁判所にとりFRAND条件の基準が一義的ではないため容易ではない。この難問に英国高等法院J. Mellor裁判官が3年に渡る膨大な審理で挑み、3月16日InterDigital(IDC) v. Lenovo [2023] EWHC 539 (Pat)判決にいたった。ロイヤリティーレートの決定する判決は英国ではUnwired Planet判決 [2017] EWHC 3083 (Pat)に続く2つめの事案である。今回の判決文は225頁と大部であるが、その判決内容は緻密さとバランスの良さでLandmark judgementと評価することができよう。まずは主要ポイントのみを整理する。以下文中の[数字]は判決分における節番号を示す。


Mellor裁判官はIDCが要求してきた「6年間で一括金として$337Milを支払え」とする主張をFRANDではなく、かつLenovoをunwilling licenseeと断ずる主張も認めなかった。一方裁判所はLenovoが主張する6年間$80 Mil +/-15%の一括金[26]に対してもFRANDではないと判断した。その上で裁判所は2007年から2023年12月まで(17年分)のロイヤリティ相当額を$138.7MilをIDCに支払うことを命じた。これはLenovoが交渉を長引かせることで得られる利益(Holdoutの効果)を認めなかったことを示す。

この金額は実質的に一台あたり$0.175に相当し[809]、Lenovoの主張したレート$0.16を若干上回るだけで、IDCの主張する$0.498の3分の1だった。


FRANDレートの算出にあたっては、裁判所はIDCの主張したTopDown手法も認めず[945]、かつ大幅なVolume discountに対しFRANDの視点から逸脱しているとした。"plainly discriminate against smaller licensees"[499], "(InterDigital's volume discount) do not have any economic or other justification"[495]


(参考1) InterDigitalのVolume discount

Samsungの場合 80%(つまり定価の20%でライセンス供与)[136]

  Appleの場合 60% [458]

(参考2)

InterDigitalの「定価」rate per standard(2020年以降Webで公開)[139]

 Rate      ASP Floor ASP Cap

       (工場出荷価格Min)   (工場出荷価格上限)

3G    0.4%      US$40 US$100  

4G    0.5%      US$50 US$200 

5G    0.6%      US$60 US$200

  

Lenovoは判決後willing licenseeと認められたことと合わせて、判決受け入れを表明した。一方IDCは過去分全てのロイヤリティーの支払が認容されたことを評価するものの、その料率が主張する料率より著しく低廉であることを不服として控訴院に控訴することを決めた。


Lenovoのプレス発表3月16日付け

InterDigital(IDC)のプレス発表3月16日付け


今回判決文redacted judgementと言われるが、IDCとLenovoのロイヤリティを巡る交渉条件の変遷をかなり詳細に明らかにしている(unpacked rate手続き)。対象scopeは2G, 3G, 4G、2015年12月から2020年1月の4年間の間にIDCが14回の条件提示を出し、Lenovoは2回のカウンターオファーを出している[898]。

両者の交渉過程をみると、IDCはWEBに公開するレート(いわゆる「定価」)から交渉を開始しているが、2018年7月ごろLenovo(当時のIra Blumberg部長)がIDCのApple、Samsungへのライセンスレートが一括金(Lump sum)であるとしても一台あたり実質0.07%であることをそのSECレポートから発見し、強力な巻き返し交渉を行った[907]。その後のロイヤリティ額のオファーは$0.70前後を巡る攻防となっている[902]。J. Mellor裁判官はIDCのライセンス交渉態度について、弱い交渉者には高額のロイヤリティでのぞみ、強い交渉者(たとえばApple, Samsung)には実質的に大幅なdiscount(85%引)を行った一括金でセトルするやり方を批判し、それがsupra-FRAND offers[927]として、IDCはwilling licensorに当たらないと判示した。


Lenovoの販売実績は大きい。2013年から2021年の間で5億台で、中国は23%、中南米が35%、米国13%、欧州9%を占め,世界第9位の位置にある[153]。特に2014年のモトローラからの端末事業買収後には目立つようになったと思われる。一方でIDCはSamsung, Apple, Huawei, Xiaomi(小米), LG, ZTEへのライセンス締結を行っており、そのライセンス供与条件は料率、一括金、あるいはハイブリッドと多彩でさまざまに柔軟な運用を行っている。この多彩さは一方でMellor裁判官の指摘する恣意的運用(subjective use)にあたり、FRAND条件とはいえないという批判につながる。


FRAND料率の算定にあたり、両者はcomparable licensesを提出した。IDCは20本、Lenovoは7本。その上でMellor裁判官は2017年IDC LGライセンス契約(3G,4G, 5G)を最も適切な比較可能な契約とした。Huaweiへのライセンス契約などとも比較を詳細に行っているが、このLGとの2017契約からの算出手法は今後のFRANDレートの算定に有益な示唆を与える可能性がある[387,491,613など]


参考

IDC代理人 Gowling WLG,

Lenovo代理人 Kirkland & Ellis

裁判Hearing dates(17日間): 13th-14th, 17th-21st, 24th-28th & 31st January, 2nd-3rd, 8th-11th February 2022


なお、この記事の作成にあたり、


Photo: Unsplash, Chris Boland

 
 
 

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