（米国）SEP SummitでのDOJスピーチ DOJ’s shifting SEP Antitrust Policies
- 二又 俊文
- 2021年10月4日
- 読了時間: 4分
更新日：2021年10月5日
バイデン新政権においてSEPは反トラスト法との関係でどのように取り扱われるか、その方針が明らかにならなかったが、今回そのヒントが出た。9月28日29日 オンラインでSEP Summitが開催されたが、そのなかでDOJの幹部が行ったスピーチが今後の方向を示すとして大きな注目を集めている。DOJ反トラスト局のJeffrey M. Wilder(Economics director of enforcement)が行ったもので、スピーチ全文がDOJのWebで公開されている：”Leveling the Playing Field in the Standards Ecosystem: Principles for A Balanced Antitrust Enforcement Approach to Standards-Essential Patents ”（スタンダードエコシステムにおける競争領域の平準化：SEPに係るバランスのとれた反トラスト法適用方針）
SEPに関して、権利者と実施者の間のバランスや透明性を重視し、前政権での行き過ぎた反トラスト法の「非適用」の動きを是正しようという内容であった。大きく実施者寄りに舵が切られたとでは言えないが、業界紙IAM誌などは米国におけるSEPについてこのような流れであれば、英独での最高裁判決やCJEUでの動きからSEPの権利者はそのenforcementを米国以外に求めるであろうと解説している。（9月30日IAM誌https://www.iam-media.com/frandseps/wilder-doj-frand-sep-speech 有料）。
その他関連記事 Law360（9月29日付）DOJ Signals Shift on SEP Antitrust Policies
DOJ official says FRAND licensing disputes could raise competition concerns.
＜Wilderスピーチの要約＞
前トランプ政権下でDOJ反トラスト局長Makan Delrahimが進めた”New Madison” Approach to Antitrust and Intellectual Property Law (March 16, 2018)の一連の動きは、SEPに関する反トラスト法の適用を制限する方向で、これらの動きは行き過ぎたSEP権利者有利を印象づけてきた。この行き過ぎた2017年から2021年初頭までの動きは今回是正される。
p.9 The 2019 statement has been criticized as favoring patent holders and promoting the use of injunctions or ITC exclusion orders to remedy SEP infringement.
反トラスト法は、たとえば競合する企業が共同で標準化を行う場合であったとしても、it “opens the door for antitrust scrutiny”反トラスト上の審査が行われるようになることもあり、Delrahim前局長時代で繰り返し述べられた反トラスト法の適用はないとする方針は撤回される。そして標準化過程での競争阻害行為には対処する必要がある。
しかし、反トラスト法が実施者にとり”panacea for failed” licensing negotiations（ライセンス交渉が失敗した場合の万能薬）というわけではない(p.5) Antitrust is not the right tool for licensees who are simply dissatised with the rate being offered to them by an SEP holder. たとえ高額ロイヤリティとなったことだけで反トラスト法違反というわけではない。競争当局が目指すのは、競争を確保させ、standard ecosystemを実現し、消費者への損害を防ぐことである。そのためには標準化過程での欺瞞を防止し、（略）競争を維持させ実施者と権利者にバランスのとれた状態を確保させ、イノベーションへのインセンティブを確保させることが必要である。DOJは注意深くバランスの取れたアプローチをとる。Pro-competitive and balanced policy(p.10)。DOJのゴールはto provide balanced policy guidance that promotes competition for all participants in the standards ecosystem. (p.10)
この意向はBiden大統領の大統領令(Executive order, 7月9日)のなかでも述べられた趣旨と一致する。このため2019年に出された（前政権下での）Supplement Letterは見直しされるべきでその分類区分を変更した。
Wilder氏はAvanciに関する昨年のBusiness Review letterについては肯定的な見解を述べ, ライセンスポイント（LTAまたはAFO）の議論にも立ち入らなかった(p.12)。“The Avanci patent pool proposed to license automakers making connected cars. The Division concluded that the pool was unlikely to harm competition because it incorporated a number of antitrust safeguards and efficiently provided access to thousands of complementary SEPs. We did not endorse, however, the pool’s approach of licensing only automakers or take a position on what licensing method was best for the automotive industry. Rather, the Avanci letter stated explicitly that the Department made “no assessment of whether end-device licensing will be successful in the automotive industry or whether it is the correct approach to licensing in this space.”
標準化団体（SDO)との関係でも、一連のビジネスレビューレターに関する動きで、前政権下でおこなわれたIEEEへの指示のようなSDOに対する過度の指示をDOJは行わない。ポイントは競争が維持されるかという点であり、透明性（transparency)を確保した施策を目指す。
（参考）現時点でDOJ反トラスト局長のポジションは空席である。Johathan Kanter氏が指名を受けているが、上院の承認待ちである。
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