東京地裁SEP専門調停開始 Tokyo District Court Launches SEP Mediation: Feasibility and Challenges
- Toshi Futamata
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更新日:6 時間前
Jan. 29, 2026 by Toshi Futamata
東京地方裁判所は、2026年2月1日より標準必須特許(SEP)紛争に特化した専門調停制度を導入する。この専門調停制度については日経新聞(1月29日付)、英国業界誌ManagaingIP (1月22日付)も報じている。
過去実績の低調と背景
2014年のApple対Samsung大合議判決以降、東京地方裁判所のSEP訴訟は、Pantech対Google(2025年、Pixel 7販売差止初認定)、同対ASUS事件等に限定される。この低調は、2014年判決でライセンス取得意思を有する実施者に対する差止請求の権利濫用認定基準が定着した影響である。
新制度の枠組み
調停委員会は、知的財産部裁判官1名およびSEP実務に精通した専門家2名(注1)から構成される。手続は原則3回の調停期日で完結するよう設計されており、
• 第1期日:事前書面提出後の個別聴取および対案指示、
• 第2期日:技術的論点説明または調停案提示、
• 第3期日:最終意思確認による成立・不成立判定、を予定する。目標期間は約半年であり、SEP保有者のグローバルポートフォリオ全体に対するFRANDライセンス料率の合意形成を志向する。算定基準はグローバル標準を参照する点が特徴である。
(注1)調停委員会構成について公表されていないが、ManagingIP誌は設楽 隆一 元知的財産高等裁判所長官、清水 節・高部 眞規子両元同長官の名前を報じている。
期間目標(6ヶ月)の現実性:
一般にSEP事案の審理期間は長期である。そのなかで6ヶ月の現実性が問われるのでフォーラムの比較を行う。
フォーラム・手続 | 類型 | 典型的な期間感 | 6ヶ月目標との距離感 |
WIPO調停(FRAND含む)(注2) | 非拘束的ADR | 典型例で4.5ヶ月、数ヶ月から1年程度のレンジか | 6ヶ月はWIPO実務の範囲内で現実的ターゲット |
WIPO仲裁 | 拘束的ADR | 一年超に及ぶことも多く、途中和解も多い | 6ヶ月で最終裁定まで行うのは通常想定されていない |
ドイツ(ミュンヘン・マンハイム等)SEP訴訟 | 訴訟 | 第1審で概ね1年前後、全訴訟は数年スパン | 6ヶ月は「半分以下」であり、訴訟レベルの審理を期待すると非現実的 |
米国ITC Section337 | 行政型訴訟 | メリット判断まで平均17から20ヶ月 | 時間制限つきでも約1年半なので、6ヶ月は極端に短い |
手続の性質を「紛争全体の包括解決」ではなく、「当事者が訴訟等のタイムラインに合わせて合意可能かをテストする集中的交渉の場」と割り切る。
技術的争点の審理を極力簡素化し、主としてFRAND条件・ロイヤルティ水準・支払方法など経済条件の調整にフォーカスする(WIPO FRAND調停に近い運用)。
関連する並行訴訟(日本の侵害訴訟、ドイツ、ITC等)との間で、手続調整・情報共有を進め、調停を「早期グローバルライセンスの窓」と位置づける。
このような条件のもとで6ヶ月目標との距離感は縮まる可能性はあろう。さらに今回の東京地裁の場合にはWIPO調停とは手続きの性格が異なり、「司法権威+固定高速スケジュール」が特徴的となる。
(注2)WIPO 調停(WIPO FRAND Deal Mediation)
https://lesi.org/wp-content/uploads/2025/03/LN_Legal_1_LN-SEP002-Wollgast-Callahan-p.47-52.pdf "WIPO ADR Procedures To Resolve FRAND And SEP Disputes"(LES, March 2025)
WIPO ADRはスイスとシンガポールに拠点を置く。2025年現在、調停事例について中小企業事案、パテントプール事案、大手通信企業事案を含む80件以上の蓄積があるとされている。累計のうち70%は調停和解にいたったと述べている。オンラインのサービスも充実させており、ある事例(欧州大手企業と中国企業の係争)で複数訴訟が進行するなか、WIPO調停で和解には至らなかったものの料率、フレームワークが絞られた例なども紹介されている。カナダ特許庁、USPTOともout-of-courtオプションとして緊密な連携を行っている。
さらにWIPO ADRについては、2025年新たに「SEP保有者Pledge」プログラムが開始されており、IoT中小企業向けについてはSEP保有者が費用2/3負担など仲介優先する内容となっている。(本ブログ2025年11月24日既報https://ipr-study.wixsite.com/sep-research-japan/post/wipo-iot分野におけるsep調停を巡る新たな動き-wipo-mediation-pledge-by-sep-holders)
まとめ:調停の任意性・非拘束性が期間短縮を可能とするが、当事者協力が前提である。
日本企業においては、国内フォーラムとしてのコスト低減効果が期待される一方、海外企業(保有者・実施者)の参加意欲が鍵となる。本制度の導入は、東京地方裁判所を国際SEP紛争解決拠点とする試みである。2月以降の運用実績が、その有効性を検証する試金石となるだろう。
参考資料
日本経済新聞(2026年1月28日)
“特許の国際紛争、東京で迅速解決” (2026年1月28日), https://www.nikkei.com/article/DGKKZO94061200Z20C26A1MM8000/
Managing Intellectual Property(2026年1月22日)
“Exclusive: Tokyo District Court to launch SEP mediation” (2026年1月22日), https://www.managingip.com/article/2fvvquxha8njxjf8achz4/patents/exclusive-tokyo-district-court-to-launch-sep-mediation

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