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VoiceAge v HMD判決ドイツ最高裁のwilling licenseeの再定義 VoiceAge v HMD: German Courts Redefine Willing Licensee

Jan. 28, 2026 by Toshi Futamata


VoiceAge v HMD訴訟判決(1月27日付)で、SEP権利者VoiceAgeの主張が認められた。その判決プレス要旨がドイツ最高裁より公開された。

27.01.2026 Nr. 021/2026Urteil vom 27. Januar 2026- KZR 10/25

本ドイツ語文書の翻訳(高橋弘史氏訳)は解説の後に続く。


<訴訟の概要>

VoiceAge v HMD事件は、EVS音声コーデック標準必須特許(SEP)を巡り、特許権者であるVoiceAge EVSと端末メーカーHMD Globalが世界各地で争っている紛争の中核をなすドイツ訴訟である。


技術・紛争の出発点

VoiceAgeは、LTE/5Gで用いられるEVS音声コーデック関連特許をSEPとしてFRAND条件でライセンス提供していると主張している。HMDはNokiaブランド端末にEVS機能を実装していたが、2019年以降のライセンス交渉が不調に終わり、VoiceAgeがミュンヘン地裁に特許侵害訴訟を提起したことから本件ドイツ訴訟が始まった。


交渉経過とFRAND争点

交渉においては、HMDが「有効かつ真に標準必須な特許」に限定した条件付きのライセンス意思を示したことや、NDA締結・情報提供・オファー/カウンターオファーが遅延・反復したことなど、典型的なFRAND交渉の綱引きが見られた。裁判所は、これら一連の行動を通じて、HMDに「無条件でFRAND条件を受け入れる真摯なwilling licenseeとしての姿勢」があったかどうかを厳しく検証することになった。


各審級の判断

ミュンヘン地裁(LG München I)は、特許の有効性と侵害を認めたうえで、HMDのFRAND抗弁を退け、差止・リコール等を命じるVoiceAge勝訴判決を言い渡した。控訴審のミュンヘン高裁(OLG München, 6 U 3824/22 Kart)は2025年3月、地裁判断を支持し、HMDを「unwilling licensee」と評価して差止めを維持し、保証金の提供や交渉のスピードなど「担保重視」の新しいFRAND評価枠組みを示したと評価されている。


欧州委員会のCJEU付託要請

本件では、欧州委員会がFRAND判断のEU法上の位置づけに関し、EU司法裁判所(CJEU)への付託を行うよう要請したが、ミュンヘン高裁はこれを採用せず、付託を行わないまま自らの判断を示したという点も重要である。この結果、FRAND/willing licenseeの要件について統一的なEUレベルの判断が示される機会は少なくとも本件では見送られ、ドイツ裁判所独自の解釈枠組みが維持・発展したという評価が成り立つ。


BGH(KZR 10/25)の決定と実務的意味

2026年1月、連邦裁判所(BGH, KZR 10/25)はHMDのFRAND/強制ライセンス抗弁を退け、基本的にVoiceAge側の主張を支持する決定を公表し、HMDの行動全体から真摯なライセンス意思を認め難いという方向性を示したと理解されている(現時点ではプレス要旨ベースの理解である)。本件は、Sisvel v Haierラインを前提としつつ、ドイツにおいて「willing licensee」認定のハードルをどこまで引き上げるのかを具体的に示したケースであり、単発の表明や形式的な交渉参加だけでは足りず、情報提供・NDA対応・保証金供託などを含めた「交渉行動全体」が一貫してライセンス取得に向かっているかどうかが、今後のSEP/FRAND訴訟でも厳しく問われることを示す象徴的な事例である。



<ドイツ連邦最高裁判決 プレス要旨>

ドイツ語原文の翻訳を高橋弘史氏より提供いただいた。


Kartellrechtlicher Zwangslizenzeinwand gegen eine Klage wegen Patentverletzung bleibt erfolglos(特許侵害訴訟に対する独占禁止法執行の異議は依然として不成功である)


判決日 Erscheinungsdatum 2026年1月27日

BGH Urteil vom 27. Januar 2026 - KZR 10/25


判決プレス要旨(ドイツ語) 

連邦最高裁判所の反トラスト部は、特許権者による特許侵害の主張を支持した。反トラスト法上の強制ライセンスの抗弁は、被告の振る舞いの全体を評価したときに、被告がライセンスに真摯な関心を示さなかったことが明らかになったため、認められなかった。


背景:原告は、オーディオ信号のコーデックに関連するいくつかの特許を保有する。これらの特許によって保護される技術的教示は、移動無線装置の制御のための技術標準 (標準必須特許=SEP) に組み込まれている。原告は、これらの技術標準を管轄する組織に対して、FRAND条件 (FRAND=公正、合理的かつ非差別的) でライセンスを付与する準備ができている、と宣言した。当事者間のライセンス契約の締結に関する交渉は成功しなかった。原告は、特に、技術標準に準拠した携帯電話を販売している被告に対する差止めを主張した。被告は、原告が市場における支配的地位 (TFEU第102条) を濫用しているため、差止めを行使できないと主張した。地方裁判所は被告による侵害を認める判決を下した。高等地方裁判所は被告による控訴を棄却した。上告により被告は本訴えが拒絶されることを目指している。


連邦司法裁判所の判決:カルテル部は被告の上告を棄却した。特許の法的地位および特許侵害の存在はもはや上告手続において争われていない。したがって、判断する点は本質的に、原告が被告に差止めを請求した場合に、原告が反トラスト法に違反して行動していたことを被告が十分に主張できるかどうか、についてのみであった。欧州連合司法裁判所の判決 (2015年7月16日判決-C-170/13-Huawei v ZTE) およびさらに2の連邦最高裁判決 (BGH、2020年5月5日の判決-KZR 36/17-FRAND抗弁Iおよび2020年11月24日の判決-KZR 35/17-FRAND及びII) に従って、連邦司法裁判所は、相手方の振る舞いがライセンスを真摯に許諾する意思がないことを示している場合には、標準必須特許の権利者はTFEU第102条によってその権利を法廷で主張することを妨げられることはない、と判示した。


被告の振る舞いは、ライセンスを受ける意思の欠如を示している。原告は、2019年10月25日に被告にライセンス契約の締結のオファーを送付した。同時に、原告は守秘義務契約の締結をオファーした。これは、原告が既に他社と締結したライセンス契約を開示することを許可するための前提条件である。被告は、2020年3月17日のライセンス契約のオファーに対応し、2020年6月になってようやく守秘義務契約のオファーに対応した。被告は、2020年5月6日に原告からさらなるライセンス契約のオファーがあったことについて、2020年8月17日にコメントを出した。さらに、被告は、数年間続いた契約交渉の間に担保を提供しただけで、その担保は、原告によって提示されたライセンス契約のオファーに示されたものを大幅に下回ったままであった。


TFEU第267条(3)に基づく欧州連合司法裁判所への質問付託は開始されない。提起された問題が判決にあたって重大ではない場合、EU法の規定がすでに司法裁判所による解釈の対象となっている場合、またはEU法の正しい解釈が合理的な疑いの余地がないほどに明らかである場合には、国内裁判所は質問付託の義務を免除される。Huawei対ZTE事件の判決によれば、個別の事案の個々の法的および事実的な状況は十分に考慮されなければならない。これは、加盟国が国内手続法を適用する際の、個々の事案における加盟国の裁判所の仕事である。これにより、EU法 (TFEU第102条) がいかなる場合にも厳格に順守すべき一連の手続規則を規定していないことは、合理的な疑いもなく導かれる。被告が提供すべき担保がその額を特許権利者のライセンス契約のオファーに合わせる必要があるかどうかの問題は、提供された担保が被告自身のオファーを大幅に下回っていたため、ここでは問題とならない。


以上


 
 
 

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