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SEP調停(SEPJM)の審理要領公表 SEP Judicial Mediation (SEPJM) guidelines announced

更新日:2月7日


Feb. 4, 2026  by Toshi Futamata


2026年2月3日、東京地裁は標準必須特許(SEP)に関する新たな審理要領に続いて、SEP調停(SEPJM)審理要領を公表した。本制度の開始により、日本のSEP紛争解決は新たなステージに入る。


しかし、この公表直後、米国有力知財メディア「IPFRAY」が、本制度を「西洋の法文化と根本的に相容れない」と断じる極めて批判的な記事を掲載した。

Tokyo District Court publishes SEP mediation guidelines: fundamentally incompatible with Western legal culture


事実誤認があるので以下のコメントを同誌に返信した。


事実対照表

項目

海外記事(IPfray)の主張

東京地裁の公表資料・事実

調停の強制性

Tokyo-style coercive mediation(強制的な調停)、Hobson's Choice(選択の余地なし)

当事者の合意に基づく解決を模索する場。不成立なら訴訟審理へ復帰可能。

審理期間

延々と続く会議(無期限の遅延)への懸念

「半年」を解決の目標期間として明記。

制度の立ち位置

西欧の法文化への挑戦・不適合

訴訟のなかで一旦立ち止まり解決を模索する**「第3の道」**。

権利者・実施者間のバランス

(記述から示唆される)権利行使の阻害

誠実な交渉者(Willing Licensee)か否かをStep1からStep4の全期間で判断。


1. 調停審理要領公表の核心とIPFRAYによる誤解

今回の新運用は、審理要領の明文化に加え、裁判官と専門委員が関与して「6ヶ月」という明確な期間目標を掲げる専門調停(SEPJM)の導入が柱である。


IPFRAYは本制度を「強制的で不透明な手続き」と定義し、実施者にとって不当な圧力であると結論づけている。しかし、これは実務実態を無視した明らかな誤解である。

• 「強制的」という誤解: 英国のような制裁を伴う強制ではない。調停が不成立であれば、速やかに訴訟審理へ戻り、判決および控訴が可能である。不利益な強制は何ら存在しない。

• 「不透明」という懸念への理解: 西洋的な、公開法廷での権利確定を重視する立場から、非公開の調停が「手続き的不透明」と映ることは理解できる。しかし、その目的はビジネス上の本音の議論を促し、「交渉を正常化」させることにある。


2. 「三方よし」という第3の道

IPFRAYの批判は、西洋的な尺度のみで日本の司法文化を測ったものである。東京地裁が目指しているのは、ドイツの独禁法に基づくWilling判断による差し止め判断や英国の裁判所主導の仲裁的アプローチとは異なる「第3の道」である。これは、日本古来の「三方よし(特許権者・実施者・社会全体のバランス)」の精神を現代的に適用したものであると言えよう。

• 特許権者にとっては、迅速なライセンス料回収の機会となる。

• 実施者にとっては、不当な差し止めリスクを回避し、予見可能性を高める機会となる。

• 社会にとっては、紛争の停滞を解消し、イノベーションを促進する機会となる。


IPFRAYのように西洋料理の基準で「日本料理は料理ではない」と断じるのはやや不適切である。東京地裁の試みは、対立を煽るのではなく、一度立ち止まって両者に解決を模索させる、新たな紛争解決システムの日本型の提案である。


3. 今後の課題:出発点に過ぎない

もっとも、強調しておかなければならないのは、「三方よし」という理念も、この審理要領という枠組みも、まだ出発点に過ぎないということだ。この「第3の道」が真にグローバルな信頼を勝ち取れるかどうかは、今後の運用実績にすべてがかかっている。SEP審理において形式主義に陥ることなく、ASUS事案やGoogle事案に続いてその後の事案で公平かつ予見可能性の高い判断を積み重ねていくこと。その実績こそが、海外からの懸念を払拭する唯一の道である。日本の知財司法が真にグローバルなスタンダードとして認められるかどうかの正念場は、まさにこれから始まるだろう。

(文責:二又俊文) Photo by Futamata

 
 
 

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