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SEP調停を巡る国際シンポジウム開催報告【発表資料】 International Symposium on SEP Mediation(Presentations)


7月15日慶應義塾大学三田キャンパスで開催された「SEP調停を巡る国際シンポジウム」において発表されたスライドを発表者のご厚意で公開いたします。


1)Dr Mattias Zigann UPC ミュンヘンLD判事 

 Recent UPC developments regarding SEPs and the potential role of mediation, arbitration, expert determination and hybrid formats at the PMAC


Zigann判事は、UPCにおけるSEP紛争の現状とPMAC(特許調停仲裁センター)の可能性を論じた。SEP紛争では通常グローバル・ポートフォリオ・ライセンスが争点となる一方、グローバルな管轄を単独で有する統一的国際裁判所は事実上存在せず、全当事者の合意を前提とするADRが「唯一のワンストップ解決」を提供し得る点を議論の出発点とした。


UPCの近年の裁判例(Panasonic対Oppo、Huawei対Netgear、Philips対Belkin、Dolby対Beko、Samsung対ZTE、InterDigital対Disney等)を踏まえ、UPCがCJEUのHuawei対ZTE枠組みに沿った一貫したFRAND判断を示していると整理。もっとも、FRANDライセンス契約締結を求める反訴を除けば、当事者の交渉態度(遅延戦術の有無、ライセンス取得の意思、対案提示、担保供託等)が決定的であるとし、ミュンヘン・マンハイム・デュッセルドルフ各地方部の判断の差異にも言及した。


さらにZigann判事はUPCが規則上ADR利用を促す権限を有すること(UPCA第79条、手続規則第104条・第332条等)を確認し、「州裁判所がADRを促すべきか」「PMACはゲームチェンジャーとなるか」という問いにいずれも "absolutely" と回答した。2026年6月2日に発足したPMACは、調停・仲裁・専門家判定・ハイブリッド形式を提供し、SEPについては必須性評価・FRAND料率評価等が可能で、UPCより迅速(3〜9か月)、秘密保持性が高く、和解成立時にはUPC訴訟費用の65%還付が受けられるといった利点が紹介された。CJEUレナルツ長官の発足式基調講演を引きつつ、PMACがSEP紛争の有力なフォーラムとなり得るとの展望が示されました。


2) Heike Wollgast, WIPO 仲裁調停センター知的財産紛争部門責任者

  WIPO SEP Mediation: Current Trends 

 WIPO SEP調停:最新の動向


ヴォルガスト氏は、WIPO仲裁調停センター(AMC)によるSEP/FRAND分野でのADRの現状を紹介した。同センターへの付託件数(全体)は年々増加し、2025年には年間1,461件に達しており、これまでにSEP/FRAND関連紛争は95件超、アジア(日本を含む)・欧州・北米の20以上の法域の当事者が利用している。調停の和解率は約70%に上り、FRAND料率に関する合意形成、時間・コストの管理、高度な秘密保持、商業的関係の維持といった利点が強調された。

特に注目されたのが、2025年11月に開始された「IoT中小企業に向けたSEP権利者による調停誓約」である。署名企業(Ericsson、InterDigital、Huawei、Nokia、Qualcomm、Sisvel、ZTE)は、提訴前にIoT中小企業へWIPO調停を提案し、調停費用の3分の2を負担することを約束する。あわせて、調停合意がない場合でも一方当事者の申立て(WIPO調停規則第4条)によって調停を開始できる「一方的申立て」が、SEP調停開始の有力な手段となり得ることが示された。実際のIoTライセンス、グローバル・クロスライセンス、パテントプールに関する3件の和解事例も紹介された。


3)Yanfang Wang, SCIA深圳国際仲裁院仲裁人、元中国最高人民法院判事

      Current Status and Trends of SEP Proceedings and Mediation in China


王艶芳(Yanfang Wang)氏は、中国のSEP紛争実務を国際的な議論への「一つの貢献」として共有する立場から報告した。中国のSEP訴訟が米国・欧州・日本・韓国など外国当事者を巻き込む高度に国際的なものに変化していることを述べ、Huawei、ZTE、OPPO、Vivo等の大手企業が中心となり、二国間・多国間で並行訴訟が進む構造が特徴となってきたと述べた。こうした「多元的な並行審理の時代」の到来により、料率水準・審理速度・差止めの可能性・執行力を踏まえたフォーラム選択が一段と複雑化しているとし、PMACやWIPO AMCといった国際的な調整メカニズムの役割拡大への期待が示された。SEP紛争がますますグローバル化するなか、継続的な対話・相互学習・国際協力の重要性が結論として強調された。

王氏は近年の重要な展開として、以下の事案を紹介した。

  • ZTE対Samsung(2026年)——中国の裁判所が比較可能なライセンスとトップダウン方式を組み合わせ、約7億3,100万ドルのグローバル・ライセンス料率を設定。

  • Huawei対Netgear——中国初の「反・反訴訟差止命令(AASI)」を発令(違反1日あたり100万人民元の制裁金)。

  • Huawei対MediaTek——販売地に基づき管轄を認め、チップメーカーと販売者の共同提訴を許容。

  • Jiangbolong事件——中国半導体企業2社の係争で、南京中院は積極的に仲裁に取り組み、SEP性を認定し、関連する171件の紛争を一括して和解に導いた。



 
 
 

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