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サムスン電子の知財における苦悩 Samsung’s IP Struggles: InterDigital and IdeaHub Cases

 

サムスン電子の2025年の営業利益は約300億ドル(KRW 43.6兆)を記録するなど事業面では好調を維持しているが、知財の側面では厳しい状況が続いている。今年明らかになった2つの事件を契機に、その苦悩の様子をDr. Sehwan Choi(Partner at FirstLaw P.C., Korea)から寄稿いただいた。

 

事件1:InterDigitalとの仲裁をめぐる経緯と新たな申立て

サムスン電子が、米国のNPEであるInterDigitalとの紛争を再燃させた。サムスンは国際商務会議所(ICC)に新たな仲裁を申し立てたが、これは2025年7月にICCがサムスンに対し約10.5億ドルのロイヤリティ支払いを命じた仲裁裁定に対する不服として申し立てでであると推測される。


事件の経過は以下の通り。

·       紛争の背景:サムスンとInterDigitalの既存の特許ライセンス契約は2022年末に満了し、その後ICCによる仲裁手続きが開始された。

·       ICCの仲裁裁定:2025年7月、ICCの仲裁裁定によりサムスンは約10.5億ドルの支払いを命じられた。これを受けてInterDigitalはサムスンと2023年から2030年までの8年間にわたる新規ライセンス契約を締結したと発表。年間約1.3億ドル(総額約10.5億ドル)のロイヤリティを受け取る条件であり、以前より約67%増加した水準である。

·       サムスンの不服申立て: InterDigitalのAnnual Report によると、2025年末サムスンは、ロイヤリティの算定方式・適用範囲・契約履行条件などに異議を唱え、ICCの仲裁に不服する旨申し立てを提起した。これに関してサンスンのPublic Statementは見つからなかった。

法曹関係者は、今回の申立ては既存の裁定に対する全面的な不服申立てというよりは、新規契約の特定の条件に対する争いという意味合いが強いのではないかと分析している。

 

事件1参考記事

 

事件2:IdeaHubへの機密情報漏洩

サムスン電子のIPセンター出身のA氏が、韓国の有力NPEであるIdeaHubのL代表と共謀して内部機密資料を流出させ、それを利用してサムスン電子を相手取った訴訟を提起し,

報酬を得ていたことが明らかになった(なお本件はソウル中央地検が起訴した事案であり、現時点では確定判決には至っていない)。


事件の状況は以下の通り。

·       情報の流出:元サムスン社員のA氏は、2022年から2023年にかけて計6回にわたり、サムスンのWi-Fi・ディスプレイ・USB関連の分析資料およびGE(General Electric社)との特許契約情報をIdeaHubのL代表に渡した。

·       訴訟の提起:IdeaHubは流出された情報をもとにGEの半導体特許を買い取り、IdeaHubの子会社であるImberaTekを通じてサムスン電子に対して特許侵害訴訟を提起した。

·       和解と対価の収受:サムスン電子はこの訴訟の和解条件として約3,000万ドルの契約を締結し、A氏はその見返りとしてL代表から100万ドルを受け取っていた。

·       司法処分:ソウル中央地検は2026年2月2日、A氏とL代表を業務上背任および不正競争防止法違反などの疑いで拘束し起訴した(現在公判前の段階)。

A氏は在職中に別途NPEを設立し、収益化の可能性を打診するためにサムスンの資料を米国の特許事務所に流出させていたことも判明している。サムスン電子は現在、内部監査機能を強化しているとのことだ。

 

事件2参考記事

 

寄稿筆者コメント

サムスン電子は、言わずと知れた韓国を代表するグローバル企業である。しかし、その技術的・事業的な成果に比べ、IPの側面では非常に未熟であるという印象が拭えない。

前述2つの事件以外にも、直近2年間の出来事だけで、元IPセンター役員が設立したNPEであるSynergy IPからの提訴や、中国のZTEとの係争における強引な進行と苦戦などが挙げられる。サムスンには、自社の技術力に見合うだけのIP能力を構築してくれることを願っている。

 
 
 

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