(欧) EU新SEP法制案が判明(1) Draft EU SEP rules revealed(1)
- 二又 俊文
- 2023年3月30日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年3月31日
欧州委員会(EU-DG-GROW)の新SEP法制案の発表は来月(4月26日World IP Day)に予定されているようであるが、その案が今回明らかになり波紋を世界中のSEP関係者に与えている。
IAMは2つの記事(有料) https://finance.yahoo.com/news/exclusive-eu-patent-body-involved-174730328.html 及び https://www.iam-media.com/article/entrusting-sepfrand-euipo-fraught-challenges
欧州委員会はこれまで専門家グループでの討議や、Webinarなどを重ねてきて、昨年前半には意見募集も行ってきたが、その上で今回あきらかになった法制案の内容はSEP権利者にSEPの権利行使を行うことができる前提として、SEP必須認定をEUIPOに申請する義務があり、SEPに関する契約をEUIPOに届ける義務を課した他、FRAND料率を設定するのをEUIPOが行おうしている。今回の内容はきわめて重要かつ膨大な業務を全くSEP経験のないEUIPOを中心に行おうとしており、”years of paralysis麻痺 ahead”, “Madness”(Joff Wild)と手厳しく批判する専門家もいる。Joff Wild(前 IAM editor):https://www.iam-media.com/article/entrusting-sepfrand-euipo-fraught-challenges(有料サイト)
施策的にもSEP権利者に厳しい内容でSEP権利者の義務は極めて大きくなると見られる。
確かにEU-DG-GROWがこれまで数年をかけ、SEP専門家グロープでの検討や、Webinarの連続実施、意見募集などは行ってきたことは事実であるが、法制化への課題(SEPの必須性テストをすべて実施することの実務的困難性、FRAND料率の決定の方法の困難性、ライセンス契約の守秘性など)が積み残されているなか、今回のようなEUIPOという一行政機関に性急に法制化を急いだ理由は明らかにされていない。
欧州では司法ルートでライセンス交渉のあり方など、たとえば2015年のHuawei v. ZTE EUCJ判決以降さまざまなSEP判例が積み重ねられてきており、さらに本年6月1日からUPC(欧州統一特許裁判所)でさらに統一的な積み重ねが実現すると見られていることとの整合性など、さまざまな議論がでている。EU法制化のためには今後さまざまな手続きがつづくので仮に施行されても再来年ぐらいにはなろうがこれから白熱の議論が続くと思われる。
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Photo: Unsplash, Christian Lue
なお、今回の登録先とされたEUIPO(European Union Intellectual Property Office)について補足する。https://euipo.europa.eu
EUIPOの所在地はスペインアリカンテにある。EP特許審査を行うミュンヘンのEPOとは全く異なる組織である。EUPIOは特許業務は一切行っておらず、商標・意匠の登録機関として機能している。また権能的にはEPOがEUの関連機関であるのとは異なりEUの直属機関である。EUIPOには特許の専門家はいないため、SEPの必須性判定は外部機関に依頼することになるが、その膨大なコスト負担はあきらかでない。通例は権利者負担となるであろうが、その場合その費用分担はさらにロイヤリティーに上乗せとなる可能性もあるだろう。
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