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速報 ドイツ特許法改正案 注目の自動差止条項に実質上変化なし German patent law reform, no change for automatic injunction

更新日:2021年6月12日

(SEP研究会会員からの情報提供にもとづき執筆)

6月2日ドイツ連立与党SPDとCDU・CSUは特許法改正案について合意できたことをプレス発表した。今回の改正でもっとも議論のあった139条Automatic injunction(自動的差止適用)条項の改正については、わずかな文言修正のみで、自動車業界などが強く要求していた過度の差止リスクへの対処に対応する文言修正を受け入れなかった。今後のドイツでの特許実務には何らの影響も生じないであろう。

与党CDU/CSUの発表(ドイツ語)「強い特許保護はイノベーション力”Made in Germany”に必須」

https://www.cducsu.de/presse/pressemitteilungen/starker-patentschutz-fuer-innovationskraft-made-germany

CDU Jan-Marco Luczak氏:

「イノベーション、創造性、独創的な才能という点で私たちの巨大な可能性を活用するためには、強い特許保護がドイツ経済の中心となる。(中略)我々は、強制実施権または議会手続における特許保護の一般的除外へのさらなる要求を回避した。差し止めによる救済の請求は、特許権が明らかに悪用されている特別な例外的な場合にのみ認められる。」

CDU Ingmar Jung氏:

「このように特許実施者の特別な保護を絶対に例外的な場合に限定し、同時に、特許所有者が少なくとも金銭的な観点から、権利の侵害に対する補償を常に受け 取ることを保証する。全体として、効果的な特許保護と不正行為の封じ込めに関して、私たちは良い妥協点に達した。」

また連立与党のSPDのコメント(ドイツ語)は「連立議員団は特許法近代化法案で合意した」

https://www.spdfraktion.de/presse/pressemitteilungen/koalitionsfraktionen-einigen-patentrechtsmodernisierungsgesetz

なお翻訳にはGoogle翻訳を使用した。


問題の139条については下線部の文言(太字下線)が追加された。

ドイツ語原文”Der Anspruch ist ausgeschlossen, soweit die Inanspruchnahme aufgrund der besonderen Umstände des Einzelfalls und der Gebote von Treu und Glauben für den Verletzer oder Dritte zu einer unverhältnismäßigen, durch das Ausschließlichkeitsrecht nicht gerechtfertigten Härte führen würde.”

Google日本語訳

「個々の事件の特別な状況と誠実さの要件により、請求が侵害者または第三者の排他的権利によって正当化されない不釣り合いな困難につながる限り請求は除外される。」

Google ドイツ語から英語翻訳

同様にGoogleのドイツ語から英語訳も日本語訳とおなじようにシンプルです。

The claim is excluded insofar as the claim would lead to a disproportionate hardship not justified by the exclusive right for the infringer or third parties due to the special circumstances of the individual case and the requirements of good faith. “


Foss氏は車業界の立場を取るので、「車業界は特許改正闘争で破れた」というブログを書いている。“Automotive companies lose German patent reform battle: injunctions still near-automatic under deform-not-reform statute.”、そのなかで

改正案は救いようのないとんでもない代物と酷評している(”The new statute is as unwieldy as it is unhelpful. It's nothing anyone can be proud of. ”)


日本の専門家からも複数のコメントをいただいた。

(弁護士) (従前の判例)熱交換器事件判決の規範の焼き直しで、(改正議論は)税金の無駄遣いになっている。

(実務家)今回の法改正は、差止請求権の制限というよりは、差止請求権の行使を一時的に制限する猶予期間(グレースピリオード)を設けるもの。例えば、設計変更をしようとしているけど、まだ3ケ月かかりそうとか、また、ライセンスの協議をしているけれども、まだ合意には至らないとか、そういう場合に、例えば、3ヶ月の執行の猶予期間を認めるもの。しかし、そのためには損害賠償責任とは別に金銭的補償が必要になる。実施者としてはかなりの覚悟がいる。


Photo: Unsplash hoch3media

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