(独)論考「最近の欧州SEP状況」latest Developments in the SEP Landscape by Dr. Ralph Nack
- 二又 俊文
- 2023年2月2日
- 読了時間: 3分
LES Japan NEWS連載中の世界のSEPシリーズの欧州編をドイツ弁護士Ralph Nack氏に執筆いただいた。本記事がLES Japanのご好意で転載許諾となっているのでここに転載紹介する。本文は英文であるが、内容の日本語要約を冒頭に加えた。LES Japan NEWS, Vol.63, No.4, December 2022.
Latest Developments in the SEP Landscape – Is FRAND more than just Willingness?
「最近の欧州SEP状況~FRANDとはWillingnessだけなのか?」
by Dr. Ralph Nack , Partner at Noerr, Munich, Germany
本文は英語PDFをつける
日本語要約
EP連載シリーズ第3回では欧州における SEP訴訟の中心地ドイツにおけるSEP司法判断 の潮目の変化を、SEP係争に数多く立ち会う Ralph Nackドイツ弁護士から解説いただく。 論考前半はSEP訴訟において重要判例である SISVEL vs. Haierの最高裁第一判決、第二判決を分析し、論考後半ではこの判断基準の中心となるWillingness(どれだけ誠実に交渉義務をは たしているのか)テストの現状と課題を論じている。 SEPを巡る訴訟においてFRANDの 判断基準は中心論点である。欧州司法裁判所(CJEU)は2015年の Huawei v. ZTE判例で、いわゆるFRANDダンスとも言われる手順を踏みながら、権利者も実施者もFRANDライセンス交渉において誠実に行動して向き合っているかを問うことをFRAND 判断の基準とした。その後のドイツにおける判 決の蓄積の集大成として最高裁判所は2020年の SISVEL v. Haier I and II判例で、実施者が当該SEPのライセンスを取得する意思を有し、そ れを具体的に明示することを大前提とする判断 基準を示した。Ralph弁護士は判示された FRAND判断基準を以下の4点に整理している。
FRANDを判断するには
1 実施者の行為に焦点を当て、
2 権利者は建設的なライセンス交渉を行うためまず努力をしているか、
3 一方実施者には誠実交渉要件(Willingness Requirement) を手続的に充足しているか、もし充足されなければunwillingと判断し、その際権利者のオファーがFRANDか否かは問わない、
4 (デュッセ ルドルフ高裁見解)WillingnessをGeneral WillingnessとConcrete Willingnessに識別し、General Willingnessが満たされている場合には権利者のライセンスオファーがFRANDか審理し、その上で実施者 のConcrete Willingnessがはじめて問題となるという審理手順である。
(詳しくは本文参照) 論者はドイツSEP訴訟において、実施者におけるWillingnessだけに焦点が当たり、過度に重視され、権利者のオファーのFRANDnessの審理が看過されている現状に今後への課題を見て いる。また、ドイツにおけるSEP訴訟における実施者のFRAND防御が、最初のWillingnessテ ストをクリアしていない限りは成立し得ないと注意を喚起している。本来であれば権利者のオファーがFRANDであるかを審理するmaterial review(重要審理)が必要であるべきなのに行われていないと指摘する。 Willingnessを巡る議論について一石を投じる議論に読者も参加してみてはいかがであろうか。
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