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(論考)FRAND義務の法的意義 Meaning of FRAND Obligation(中所弁護士) 

更新日:2024年8月20日



Photo: Texas East District Court HP


海外のSEP議論と日本のSEP議論をみると時として思わぬ違いに遭遇することが少なくない(注)。たとえばその一つにFRAND義務(FRAND Obligations)の解釈がある。

海外判例ではFRAND義務は権利者と実施者の双務的義務であることが定着しているが、日本では片務的義務(権利者だけが義務を負う)であると主張する剛腕の論者も時として存在する。

 (注)SSPPU、License to All, 第三者のためにする契約、消尽などいくつかの論点


今年初め米国テキサス東部地裁のGilstrap判事が、この双務的義務について丁寧な法的解釈を行なっており、FRAND義務の双務的性質をETSIにおけるFRAND宣言(ETSIのIPポリシー)と、その準拠法であるフランス民法との「合わせ技」により生じていることを解き明かしている。


この判例について中所昌司弁護士(日本・カリフォルニア)長島・大野・常松法律事務所が緻密な判例解説をLES Japan News 2024年6月号に寄稿されている。LESと中所弁護士のご好意でここに転載させていただく。


以下、中所弁護士の執筆を引用

<概要>2024年1月22日付け本件決定において、テキサス州東部地区連邦地裁のRodney Gilstrap裁判官は、ETSIのIPRポリシーの準拠法であるフランス法の解釈として、SEPのライセンス交渉においては、

①当事者双方が誠実交渉義務を負い、この義務に違反した場合には損害賠償責任を負うこと

②一方当事者が誠実交渉義務に違反した場合には、他方当事者の誠実交渉義務が一時的に停止されること

を判示した。

Gilstrap裁判官は、上記解釈により、SEP権利者及び実施者双方の協力による交渉が促進されると考えたものと思われる。


なお、本件決定後、同月26日、陪審は、本件の当事者のいずれについても、FRAND義務違反(誠実交渉義務違反)が認められないとの評決を下した。もっとも、その後、同年7月15日、サムスン(実施者・被告)は、G+(SEP権利者・原告)のFRAND義務違反(誠実交渉義務違反)の有無に関して、裁判所の陪審に対する指示に瑕疵があったことを理由として、改めて裁判所が法律的な判断を示すこと等を求める申立てを行っており、本件訴訟は未だ終結していない。


LES誌における論考本文は以下のPDFリンクよりダウンロードできる。

記事名称:「SEPライセンスに関する交渉の相手方が不誠実である場合には、誠実交渉義務が一時的に停止される旨判示したテキサス州東部地区連邦地裁判決」 

掲載誌:LES Japan News Vol. 65,No.2, June 2024      

執筆者:弁護士(日本・カリフォルニア)、弁理士(日本) 中所 昌司(ちゅうしょ まさし)長島・大野・常松法律事務所

 
 
 

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