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<速報>東京地裁SEP判決2件 グーグル製品差止め Two recent SEP rulings from the Tokyo District Court

更新日:1 時間前

June 24, 2025


English readers can find the English article at the following LINKEDIN link.


<速報>日本で初のSEPを巡るGoogle製品差止め判決と、ロイヤリティ支払いを命ずる判決の2本が相次いで出された。



2014年のアップルサムスンの知財高裁大合議判決以来、SEPの中心論点であるFRAND義務(誠実交渉、日本では権利濫用論)に正面から論じた事案はなかったが(注)、東京地裁で相次いで2本のSEP判決が下された。昨日23日出されたPantech v. Google事件では、Google製品(Pixel7)に対して差止めを認める判決が出され、関係者を驚かせている。


両件ともLTE(4G)の通信SEPを巡る係争で、SEP権利者は韓国Pantechである。中島基至裁判長はいずれ事案でもSEP特許侵害を認定した後、Googleの事案ではGoogleを誠実な交渉者とは認めず(unwilling licensee), 権利者Pantechの申し立ては権利濫用にあたらないとSEP差止め判決を下した。これは日本で最初のSEP差止め判決となった。さらに判決では

原告は担保金(1000万円)を積めば直ちに強制執行を申し立てることができる仮執行宣言付きとなっている。


SEPに詳しい弁護士によれば、UPC(欧州統一特許裁判所)や米国などのSEP判決で採用されているFRAND obligation誠実交渉義務論とは異なり、我が国の2014年アップルサムスン大合議判決は(権利者の)権利濫用論の規範から出発しており、議論の出発点が異なる。

「もっともFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有しないとの認定は厳格にされるべきである」と判示している。そのなかで今回のような差止めが認定されたのは「きわめて稀有なこと」と見られる。


判決文はまだ裁判所判決Webサイトには公開されていないが、判決の概要は日経新聞とMLEXの記事を参照願いたい。


●日本経済新聞(電子版) 6月23日付 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2387Y0T20C25A6000000/ 

「特許侵害でGoogleの販売差し止め 東京地裁、和解に非協力を問題視」


"Japan court awards rare victory to Pantech in SEP battle with Google"



(1)韓国Pantech v. 米国Google

Photo: Unsplash, Powel Czerwinski
Photo: Unsplash, Powel Czerwinski

 東京地裁第40部(中島基至裁判長)

 事件番号 令和5年(ワ)第70501号

 言い渡し 2025年6月23日


●Pantech訴訟代理人弁護士:松永章吾 他


●Google訴訟代理人弁護士:根本浩 他




もう一本の判例

(2) 韓国Pantech v. 台湾Asus

 東京地裁第40部(中島基至裁判長)

 事件番号 令和4年(ワ)第7976号

 言い渡し 2025年4月10日

 判決文は東京地裁の次のWEBリンクで公開されている。


裁判所は被告AsusをGoogleの事案とは異なりWilling licenseeと認定した上、Asusにロイヤリティ相当額の支払いのみを命じた。


 判決では両者の交渉過程を詳しく述べているが、Asus(被告)は低額ロイヤリティの主張したのに対して、Panech(原告)は高額ロイヤリティの主張し、結局それらは平行線を辿った。しかし、裁判所の認定では、日本ではFRANDレートの算出方式はまだ定着しておらず、ロイヤリティの差が誠実交渉の判断とはならなかった。


また、被告Asusは一応のFRAND義務に沿ったような交渉(キャッチボール)をしたとして、それをGoogle事案とは異なり不誠実とまでは判断しなかった。その上で原告Pantehの差止め主張は権利濫用にあたると判示した。


なお、被告AsusはPantechのSEPを特許侵害しているので、ロイヤリティ金額相当額(過去3年間)のみ損害賠償は認めた。


本事案は現在、知財高裁に控訴されている。


--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- (注)SEP判例としては大合議判決以後、2021年にSharp v. OPPO (オウガ・ジャパン)の判決もある。事件番号令和2年(ワ)第2146号。言い渡し令和3年9月24日。この事案では特許無効で特許権行使が認められず、Sharpが敗訴している。判決文も公開されている。https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/835/090835_hanrei.pdf

 
 
 

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