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Huawei v. MediatekのFRAND紛争(訂正あり) Two key points of interest in UK trial

更新日:7 日前

June 19 2025


(記事訂正)英国におけるSSPPUの判例について誤りがありましたので訂正します。英国2023判例でSSPPUの考えが否定されています。(詳細は記事後半)

  

現在Huaweiと台湾Mediatekの間で、4G/5Gに関するSEPを巡る国際的なFRANDライセンス訴訟が注目を集めている。

 

英国弁護士・日高誓子氏(Bird & Bird所属)によれば、「MediatekとHuaweiの間で中国・UK/UPCでFRANDライセンス条件をめぐる訴訟が継続しております。MediaTekは、チップメーカーで自社のみがターゲットとされることが差別的であり、HuaweiはOEMレベルでライセンスを求めるべきだと主張していますが、同時に英国裁判所に対してFRANDレートの決定を求めています。これにより、英国裁判所が初めてチップレベルでFRAND条件を判断する可能性があり、注目されています。


英国裁判所のFRANDトライアルは現時点では来年2月に予定されています(変わる可能性あり)。なお、MediaTekは、中国におけるHuaweiによる提訴に対応する形で欧州での訴訟を提起しました。

 

●ブログ筆者が注目する2つの論点

 

(1)だれが「Global FRANDレート」を決定するのか?

以下の国々で訴訟が提起されているが、「Global FRANDレート」の決定を巡る判断を行う意思を示しているのは中国と英国だけである。

-中国(深圳中級人民法院)

 Huaweiは2024年5月24日深圳法院でグローバルFRANDレートの決定と、4G, 5G特許侵害訴訟を提起。

 Huaweiの主張するFRANDレートは、OEMであっても、Tierに関わらず均一レートと主張。

 

-ドイツミュンヘン地裁

 Huawei提訴 Case ID:ACT_14180/2025およびACT_13761/2025 侵害・差止め

-ドイツマンハイム地裁:  Huawei 提訴。侵害・差止め

 いずれもFRAND判断には踏み込まず。

 

-UPC ミュンヘン支部(LD):2025年3月提訴 Huawei 提訴。侵害・差止め

 Global FRAND判断には言及なし。

 

-英国High Court(Judge Thomas Leech)

MdeiaTekがGlobal FRAND rateの決定を求める(Case ID: HP-2024-000028)。

HuaweiのStrike Out 申し立ては棄却(2025年3月18日)https://www.bailii.org/ew/cases/EWHC/Patents/2025/649.html

FRAND Trialは来年2月に行われることとなった([2025]EWHC1016(Pat),  Miade判事。https://8newsquare.co.uk/case/mediatek-v-huawei/

 

 

(2)ロイヤリティをどのように決めるか? 英国はSSPPUを採用するか?

 

SSPPU(Smallest Saleable Patent-Practicing Unit)は、ロイヤリティ算定において特許が実施される最小販売単位に基づくという考え方。たとえばスマホ全体ではなく、チップ単位で評価すべきという立場。SEP判例からみて米国、ドイツではSSPPUは採用されていないが、SSPPUの思想に比較的親和的なのは、中国と日本(大合議判決)だけといえる。中国では裁量的に運用されており、日本では2014年以来判例がない。


SSPPUについては来年2月の判断では英国でも顧慮されないだろうが、初めてチップメーカーに対するFRAND条件を判断する可能性があり どのようにFRANDロイヤリティを決定するかが注目される。

 

SSPPUをめぐる扱い

 

国・地域

SSPPUの扱い

SSPPU傾向・特徴

米国

SSPPUベースをロイヤリティ算定基礎とした判例は過去にあるが、その後の判例で法的義務ではないと判断

SSPPUの考え方は陪審制と相俟って米国でツールとして発展した。LaserDynamics v. Quanta(2012), Ericsson v. D-Link(2014) でSSPPUが採用された。しかし、FTC v. Qualcomm第9巡回控訴裁はFTCの主張(SSPPUを義務的に採用すべき)には法的義務ではないとした。判決(969 F.3d 974):“FTC’s economic expert suggests that Qualcomm should license its SEPs based on the SSPPU, rather than the handset, to avoid ‘unreasonable royalties.’ However, this methodology is not a legal requirement under antitrust law or FRAND principles.”

ドイツ

明示採用せず

BGH Sisvel v. Haier(2020):ロイヤリティ算定よりも「SEP侵害+FRAND交渉義務履行」が焦点。SSPPU議論なし

英国

判例なし

Unwired Planet v. Huawei(2020)でもSSPPUは明確には採否せず。SSPPUを米国的とみる見方もある。むしろcomparableや商慣行を重視

日本

明示採用せず。しかし、親和的

2014年アップルサムスン大合議判決。「発明の寄与割合を加味して製品価格に反映すべき」という判断からSSPPUの思想に親和的と言える。日本においては実質的な寄与評価モデルが基本となっており、諸外国で行われている完成品Net Selling Priceをベースにしない。

中国

一部言及。裁量的に運用

Huawei v. Conversant(南京中院2019), Samsung v. Ericsson(深圳中院2021)で間接的に採用。2024年SAMR(独禁当局)が出した「SEPの反トラストガイドライン」第8条で「技術寄与に応じた料率設定」や「ロイヤリティの合理性」に触れて(8条)、SSPPUに親和的。

英国でSSPPUを否定した2023年判例について


高橋弘史氏よりの2023年判例指摘

Optics v. Apple事件の第一審判決。[2023]EWHC 1095(ch)

段落213~段落220です。


🔳Appleの価格に対するアプローチは、販売可能な最小特許実施単位であるSSPPUに基づいていた。このセクションの目的は、私の判断ではSSPPUのアプローチをなぜ支持できないのかを説明することである([213])。

🔳ベースバンドチップセットの価値が25米ドルであり、製造コストが20米ドルであれば、チップメーカーの利益は5米ドルになる。但し、最終製品はライセンスされていないとする。このような場合に、ベースバンドチップセットのメーカーは、Stackを構成するSEPにライセンスを求めたり、取得したりすることはない([216])。

🔳Appleは、ベースバンドチップセットメーカーは5米ドルの利益からライセンス料を支払うべきであり、これは誰によっても支払わられるべき絶対的な制限を構成する、と主張した([217])。

🔳Appleはまた、Stackのライセンスを取得するのはベースバンドチップセットメーカーであり、そのライセンスによって特許権者の知的財産権を消尽し、ベースバンドチップセットを製品(例えば受話器)に組み込むメーカーはそれ自体がライセンスを必要としない、と主張した([217])。

🔳権利の消尽は、この法域においても、法律の複雑な領域である; その効果は法域によって異なる。私は、議論のために、一旦はAppleが正しく、ワールドワイドでベースバンドチップセットメーカーがライセンスを取得することは、あらゆる 「下流」 製品に関するSEP権利者の権利を消尽させる、と仮定する([217])。

🔳しかし、Appleの主張の基本的な前提が本質的に間違っている([218])。

🔳ベースバンドチップセットメーカーが、5米ドルの利益から、Stackのライセンス料を提供しなければならない理由はない。利益の一部を放棄すると仮定するのは、かなりばかげている([218])。

🔳ベースバンドチップセットメーカーは、Stackを構成するSEPへのライセンスを持つその製品の購入者に対して付加価値を反映するために、彼らの製品の価格を引き上げる可能性がはるかに高い。極めて明確な市場の証拠がないため、ベースバンドチップセットのメーカーがライセンスのコストを吸収して、それを転嫁しないという仮定は、ほぼ確実に安全ではなく間違いでもある([218])。

🔳どのような立場であれ、Stack全体のライセンスを購入するための金額が、1ユニットあたり5米ドルに制限される理由はない([220])


日高誓子弁護士コメント

同様にOptis v Apple (2023)一審でSSPPUベースの料率の見積もりは棄却されました(“Indefensible”-213)。

 

"There is no reason why the baseband chipset manufacturer would have to fund the licence fee to the stack out of the US$5 profit that is being hypothesised. Indeed, it is quite absurd to presuppose that the manufacturer of a baseband

chipset would forego any part of their profit unless absolutely compelled to do so. It is much more likely that baseband chipset manufacturers would increase the price of their product to reflect the added value to purchasers of that product of having

a licence to the SEPs comprising the stack. Absent extremely clear market evidence, the assumption that the baseband chipset manufacturer would absorb the costs of the licence and not pass them on is almost certainly both unsafe and wrong. "(218)

 

"…focusing on the SSPPU in no way assists in deriving a price for the technology licence here in issue. What matters is the price that can be charged in the market; not an artificial attempt to localise the technology in issue to a particular component. "(220)

 

SSPPUベースの料率の見積もりの是非については控訴の根拠になりませんでしたので、現時点では英国ではSSPUベースは間違っている、という立ち位置です。

 

 

英国で提訴することによってMediatekはSSPUベースでない(端末レベルの)FRAND料率の支払いを求められるリスクを負っていると思います。


高橋弘史様、日高誓子様ご指摘大変ありがとうござざいました。



その他 関連記事

●IP FRAY 2025年4月11日


●JUVE(2025年4月15日付)

MediaTek and Huawei take multi-jurisdictional chip battle to the UPC



 
 
 

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