「崖から転落」ノキア・エリクソンの中国売上が苦況 From 12% to 3%: The Collapse of Nokia and Ericsson in China
- Toshi Futamata
- 7 時間前
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中国の通信市場は着実に伸び、5Gは65%を超える普及となっている。2025年前11个月通信业经济运行情况 しかし、その一方で長年中国市場で安定した存在をしめしてきたノキアとエリクソンが事業存続の危機に瀕している。
中国の通信市場は好調、しかし……
中国の通信市場は2025年も成長を続けた。5Gの普及率は65%を超え、5G基地局数は2025年末時点で483万局に達し、世界最大規模を更新し続けている。中国政府の発表によれば、「通信業務量・収益は着実に伸長し、モバイルインターネットトラフィックは急速に拡大、5G・ギガビット光ネットワーク・IoTなどのインフラ整備もさらに進展した」という。だが、この成長の果実は、かつて中国市場を支えてきた欧州の二大通信機器メーカー——ノキアとエリクソン——には届いていない。米国の『IEEE Techblog』誌と欧州の『Light Reading』誌が2026年2月に相次いで報じたように、両社の中国売上高は「崖から転落する」(fall off a cliff)とも形容される急激な落ち込みを見せている。

数字が示す急落の実態
エリクソンの2025年通期における中国売上高は、総売上のわずか約3%(約8億ドル)にまで縮小した。2019年には約18億ドルを誇っていたことを考えると、その凋落ぶりは明らかだ。CEOのボリエ・エクホルムはすでに注力市場を米国・インド・日本・英国へとシフトさせており、中国への依存度低減を加速させている。
ノキアも同様に厳しい。「グレーターチャイナ(大中華圏)」部門の2025年通期売上は前年比19%減の約9億1300万ユーロ。かつて20億ユーロを超えていたピーク時と比べると、半分以下に落ち込んでいる。
両社を合わせた中国市場シェアは、2020年時点の約12%から現在は約3%にまで低下した。一方で中国国内ではファーウェイが約52%、ZTEが約26%を占めており、事実上の二社独占状態が続いている。
なぜ排除されているのか——「ブラックボックス審査」と地政学
両社の苦境の背景には、単純な競争力の問題ではなく、地政学的な要因がある。
2025年10月以降、中国サイバースペース管理局(CAC)は海外製通信機器に対する「ブラックボックス型」のセキュリティ審査を強化した。機器の全構成部品の詳細な文書化や、現地生産比率の開示が求められるが、審査基準は非公開で、結果が出るまで3ヶ月以上を要する。その間に国有キャリアの入札では国内ベンダーが選ばれ、海外勢は事実上締め出されるという構図が常態化している。
また、この動きはスウェーデンをはじめとする欧州諸国がファーウェイ製品を排除したことへの「報復」という見方も根強い。国家安全保障を理由とした市場閉鎖が、東西双方で進む「デカップリング」の象徴となっている。
SEP(標準必須特許)戦略への深刻な影響
この市場構造の変化は、知財——とりわけSEP(標準必須特許)のライセンス実務——に重大な影響を及ぼす。
交渉力のシフト:中国市場での実装シェアを失った欧州勢は、中国の端末メーカーやキャリアとのライセンス交渉において、レバレッジが相対的に弱まるリスクがある。「使ってもらっている」という事実がなければ、交渉のテーブルに対等に座ることすら難しくなる。
「実装なき特許権者」という逆説:一方で、中国メーカー(ファーウェイ、シャオミ、OPPO等)が欧州・インド・東南アジアへとグローバル展開を進める中、欧州勢はそこからのライセンス収益を収益の柱に据えざるを得なくなる。ノキアがOPPOやvivoと世界各地で長年にわたり訴訟を繰り広げた末にクロスライセンス契約を締結した経緯は、この構図を先取りしている。
3GPPと標準化のパワーバランス:中国が国内市場を守るために独自のセキュリティ基準・技術仕様をデファクト化させようとする動きは、将来の標準化会議(3GPPなど)におけるパワーバランスにも影を落とす可能性がある。
欧州の反応と市場分断の加速
ノキアの幹部などは、欧州市場でいまだ一定のシェアを持つファーウェイやZTEに対し、欧州当局も「対称的な規制(Symmetrical measures)」を課すべきだと主張し始めている。
日本市場では、地政学的な理由からファーウェイが排除されているため、エリクソンとノキアはドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天の主要4キャリア全てに供給を続けており、外資勢の合計シェアは50〜60%に達すると推計されている。中国での損失を親米・親欧州圏でカバーしようとする戦略が鮮明だ。
まとめ——5G/6Gの「東西分断」は不可逆か
ノキアとエリクソンの中国市場からの事実上の退場は、単なる一企業の業績悪化ではない。5G、そして次世代の6Gに向けたサプライチェーンの「東西完全分裂」を象徴する出来事として、業界全体に重い問いを投げかけている。
「市場の実態(実装)」と「特許権の行使」が地理的に乖離していくこの状況は、SEPライセンスのあり方を根底から問い直すものだ。今後の知財紛争の行方と、標準化の場での主導権争いから目が離せない。
IEEE techblog
Light Reading



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