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【速報】EUがSEP裁判権を巡りWTOで対中国パネル要請決定   EU requests WTO Panel against China over SEP Jurisdiction


Feb.15, 2026 by Toshi Futamata


EU、中国のグローバルレート設定を理由にWTO紛争パネル設置要請へ――DS632の背景と展望


Executive Summary

EUは2026年2月24日、中国の裁判所が特許権者の同意なくグローバルなSEPライセンス条件を設定する権限について、WTOに紛争パネルの設置を要請する。これはDS611に続く「第2ラウンド」の提訴であり、2025年7月にEU勝訴が確定したにもかかわらず、中国が引き続き主権侵害的な行為を継続していることへの対抗措置である。欧中のSEP訴訟フォーラムを巡る緊張は新たな段階に入った。


事実関係の整理

DS611の経緯

DS611では、中国裁判所による禁訴令(ASIs)とその透明性欠如がTRIPS協定違反として争われた。2025年7月、WTO上訴仲裁人はEU側に有利な判断を下し、中国のASIs政策が他国の裁判所における特許権行使を阻害すると認定した。EUは現在、中国による履行状況を監視中である。


DS632の新展開

2025年1月、EUは新たにDS632として協議要請を開始。

DS632の法的争点の中核は、TRIPS協定第28条(特許権の専有権)、第41条(権利行使の確保)、第44条(差止)、および第1条1項(加盟国の実施裁量の範囲)との整合性にある。特に、非中国特許に対するグローバルレートの一括設定が、属地主義に基づく各国特許権の独立性を侵害するかが問われる。

2025年4月の協議では解決せず、EUは2026年2月24日のWTO紛争解決機関(DSB)会合で正式にパネル設置を要請する。中国が初回で阻止した場合、次回会合で自動的にパネルが設置される見込みである。


専門家の見解

DS632はDS611の「延長戦」ではなく、より本質的な主権問題を提起している。禁訴令(ASIs)は手続的な問題だが、グローバルレート設定は実体的に他国の特許権に直接介入する行為であり、問題の核心は、特許権の属地主義司法管轄権の越境的行使との整合性にある。中国裁判所によるグローバルレート設定は、域外特許に対する事実上の裁判管轄権の拡張として評価され得る。


中国がDS611の仲裁判断後も姿勢を変えなかったことは、SEP訴訟のフォーラムとしての地位確保を戦略的優先事項と位置づけている証左である。一方、EUの連続提訴は、5G・6G時代における欧州企業のSEPポートフォリオ保護がEUにとり死活的利益であることを示している。


DS632の帰趨は、グローバルなSEPライセンス実務の将来を左右する。中国裁判所によるレート設定が認められれば、中国市場へのアクセスを維持するために、特許権者がグローバル条件での包括的ライセンスを受諾せざるを得ない構造が固定化することになり、FRAND交渉の重心は事実上中国司法に移る可能性がある。その結果、グローバルSEP交渉における交渉力バランスが、特許権者側から実施者側へ構造的にシフトすることも想定される。


まとめと今後のシナリオ

DS632は単なる知財紛争ではなく、グローバル標準技術を巡る裁判管轄権の再配分を問う案件である。

① EU勝訴の場合:中国は司法制度の調整を迫られ、SEP紛争の重心は再び欧米へ回帰する可能性。

② 中国実質勝訴の場合:グローバルレート設定モデルが既成事実化し、中国がSEPフォーラム競争で優位を確立。

③ 中間的妥協の場合:管轄権の限定や手続的透明性の改善を条件とした制度修正に収斂。


日本も本件については積極的にWTOでのパネル議論への参画が望まれるだろう。


ブログ記事の参考リンク:

WTO公式文書


EU公式発表


専門解説

 
 
 

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