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中国標準化研究院2026年SEP報告書 CNIS SEP Report 2026 Summary

17 時間前
読了時間: 6分

更新日:6 時間前

October 28, 2026 by Toshi Futamata


2025〜26年のSEP世界動向を中国側はどう整理したか(中文に基づく整理)

原文:中国标准化研究院连续三年发布标准必要专利发展年度报告


要約

本報告は、2025〜26年のSEP動向を「紛争の多極化」と「ADRの制度化」の二つの流れで整理しています。CNIS記載の主な内容は次のとおりです。

Photo: Unsplash sou Jest
Photo: Unsplash sou Jest

•     主戦場の分散:中国、独、英、UPCに加え、ブラジル、インド、モロッコ(アフリカ初の判決)の裁判所が、差止や供託を命じるようになりました。

•     全世界料率の不一致:ZTE対Samsungで、重慶(7.31億ドル)、ロンドン(3.92億ドル)、ミュンヘン(6.4億ドル)が同時期に異なる結論を出しました。

•     ADRの制度化:UPCのPMACが2026年5月に稼働し、東京地裁がSEP調停要領を公表し、WIPOがIoT中小企業向けの調停誓約を始めました。

•     プールライセンスの位置づけ:UPCハンブルクとブラジル上級審が、プール許諾の提示でFRAND義務は足りると判断しました。

•     ライセンス領域の拡大:車載、Wi-Fi、動画配信、AIインフラ向けメモリ(DRAM/NAND)へ広がっています。

•     中国の整理:政策制度、運用、研究の三つの「協同」が必要だと結んでいます。


報告書の概要

発行主体は中国標準化研究院(CNIS)[1]です。2025年版に続く最新版で、データ基準日は2025年12月31日、参照URLの最終確認は2026年10月5日です。中文版は112頁です。

2026年版報告書は全6部構成です。第1部では標準必須特許のエコシステムを概観し、第2部では主要国際機関における標準必須特許のガバナンス実務を整理しています。第3部では主要国・地域における発展動向をまとめ、第4部では重点産業における標準必須特許の実務状況を整理しました。第5部では中国における発展成果を論じ、第6部では「第15次5カ年計画」期間における標準必須特許の発展に向けた展望を提示しています。


特に強調されている点

•     ADR・調停:WIPO、PMAC、東京地裁、CCPIT調停センター(中国国際貿易促進委員会/中国国際商会調解センター)を並べています。WIPOの和解率は約70%です。東京イベントでのUPCのZigann判事の「判決とADRの二本立て」という見方を引き、「判決は地域限定、SEP交渉は世界規模」という構造的問題への解として位置づけています。

•     FRAND履行の判断基準:料率の高低よりも、交渉行動(Unwilling交渉、Hold-out反向劫持、プール提示の効果)を見る流れを繰り返し述べています。

•     紙幅の配分:主要国・地域が約22頁、産業実務が約13頁、中国の成果が約8頁です。

•     DS611の整理:最高人民法院関係者の「禁訴令政策は存在しない」という発言を引きつつ、中国が政策撤回を宣言し、EUが2026年4月に「基本的に決着」と受け止めた経過を記しています。展望は、国際ルール形成への関与拡大を掲げています。


2025年版からの変化

•     構成:5部構成から6部構成になりました。エコシステム概観と重点産業実務を新設し、提言は「展望」に集約しています。

•     統計:中国からのISO/IEC/ITUへの特許情報開示声明の総数は6,826件(2024年末)から6,950件(+124件)に増え、具体的な特許情報を含む必須声明の比率は23.22%から25.51%に上がりました。

•     新たな論点:米国のFRAND裁判例、プール料率判断、ADR機関の動向を補い、EUのSEP規則案の撤回、DS632のパネル組成、中国での「標準必須特許紛争」の独立案由化などを加えました。


主要な内容

国際機関

•     DS611:2025年7月のMPIA仲裁裁定でパネル判断の一部が覆りました。2026年4月1日にEUが「中国が禁訴令政策の撤回をWTOで宣言した」と公表しました。

•     DS632:重慶のOPPO対Nokiaの料率判断が対象です。2026年3月にパネルが自動設置され、5月にDSU第25条の仲裁で合意し、7月13日にパネルが組成されました。

•     WIPO:SEP判例集は12法域とUPCの計134件です。PATENTSCOPEには標準関連特許46万件超が収録され、2026年2月にSisvelなどプール提供データを初めて取り込みました。2026年6月の報告書「FRAND Economics」は、すべての紛争に通用する単一の評価手法は存在しないと結論しています。AMCのSEP案件は累計95件超で、2025年11月のIoT中小企業向け「調停誓約」には7社が署名しています。


ISO/IEC/ITUへの特許情報開示声明(2025年末):

項目

数値

(中国の)開示声明の総数

6,950件(前年比+124、+1.82%)

関係標準

2,031件(標準総数45,833件の4.43%)

具体的特許情報を含む必須声明

1,773件(25.51%)、特許23,354件

声明件数の上位国

米2,492、日1,220、韓598、仏470、フィンランド456、独440、中348

特許件数の上位国

中7,679、韓5,335、米3,796

声明件数が最多の標準はISO/IEC 14496(1,273件)、特許件数が最多はISO/IEC 23090(8,837件)です。


主要国・地域

•     米国:USPTOがSEPワーキンググループを設置しました(2025年12月)。司法省は、標準への組込みだけでは市場支配力を推定できないとの立場です。

•     EU・UPC:SEP規則案は2025年10月に正式撤回されました。PMACが2026年5月に稼働し、UPCハンブルクは、FRAND適合のプール許諾の提示で権利者の義務は足りるとしました(2026年8月)。

•     ドイツ・英国:ミュンヘンI地裁は、反暫定ライセンス差止命令を出し、ZTE対Samsungでトップダウン法により6.4億ドルを認めました。英国最高裁は、Tesla対Avanciでプール料率の実体審理を認め、高等裁判所は暫定ライセンスを認めています。

•     日本:東京地裁が2026年1月にSEP調停・訴訟の審理要領を公表しました。調停委員会は裁判官1名と専門家2名で構成され、調停期日は3回です。報告書は、2026年7月15日に東京で開かれた「SEPと調停」国際シンポジウムでのWIPO・UPC関係者の発言も引用しています。

  (注)7月15日SEP研究会主催イベント(於いて慶應義塾大学)を引用している

•     その他:韓国は第6次国家標準基本計画(2026〜30)を発表し、インドのデリー高裁は暫定供託命令を活用しています。ブラジルは仮差止が増え、モロッコ(アフリカ初のSEP判決)も加わりました。


産業・実務

•     6G・動画:3GPP Rel-21は2027年3月承認の予定です。中国の6G特許出願は世界の約40.3%(2025年6月時点)です。H.267の提案募集は2026年7月に始まりました。

•     プール:Avanciの車載4G/5Gは140ブランド超をカバーし、Wi-Fi 6の車載ライセンスも開始しました。Access AdvanceのHEVC Advanceは、HEVC SEPの約78.75%を保有し、Via LAのHEVC/VVC事業を買収しました。Via LAはDRAMプールを始動しています。

•     ADR:WIPO-AMCの調停和解率は約70%です。PMACは3〜9か月で手続を完結する想定で、中立人材は300名超です。CCPIT調停センターは2026年6月にSEP専門家プールを発足させました。

•     大型合意:Ericsson–Transsion(2026年7月)、Huawei–Qualcomm(2026年10月5日)です。ストリーミング事業者がSEP訴訟の当事者として増えています。


中国の制度・司法

•     政策:国務院の知財「十五五」計画は、SEPの公正・合理的な許諾の強化を掲げています。CNIPAとSAMRはSEPライセンスガイドラインを策定中で、CNIPAは標準関連発明特許出願指引も公表しました。SEP紛争の行政裁決の試行も進みます。

•     最高人民法院:2026年1月から「標準必須特許紛争」が独立の案由になりました。標準策定時に特許を開示しなかった権利者の権利行使は、権利濫用とされます。非対称管轄合意があっても、中国裁判所の管轄は否定されません。

•     地方法院:Huawei対MediaTekの全世界52件が一括和解し、報告書はこれを「チップレベル」課金の実現例として挙げています。


展望

2026年から「十五五」期に向けた方向性として、報告書は「政策制度」「工作機制(部門間の運用)」「科研創新」の三つの「協同」を掲げています。


読む際の留意点

•     国家級機関による公式報告書であり、DS611・DS632や中国の司法判断は、公式発表を主な根拠にしています。

•     この統計は、一括での開示や不完全な開示を含む声明データが元です。具体的な特許情報を含むのは25.51%で、CNIS報告書自身が統計誤差の可能性を認めています。

•     独・ブラジル・インドの事例には、IP Fray、JUVE、中国語のSNS記事など二次情報に拠る記述があります。ミュンヘン地裁のFRAND指針は、報告書自身が裁判所サイトで全文を確認できなかったと注記しています。


原文リンク

掲載ページ(2026年10月21日付):

版

中文版全文

英文版概要

2026年版

P020261021300254558205.pdf

P020261021300255079433.pdf

2025年版

P020261021300255317637.pdf

P020261021300255934889.pdf


[1]中国標準化研究院(CNIS、北京)は、自らを「国家級の総合的標準化研究機関」と位置づけています。同院は、100万件規模の宣言・標準・特許・政策・事例データを整理分析し、年次報告書を中文と英文で公表しています(英文は概要を公開し、全文は請求ベース)。本報告書は公的機関による公式報告書です。

 
 
 

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