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日中4社が画像特許でプール形成 ― Canon・Sony参加 Imaging Non-SEP Pool by  Four Japanese and Chinese Firms Commenced 

16 時間前
読了時間: 6分

September 21, 2026 by Toshi Futamata


Canon・Sony・Huawei・OPPO、125,000件超/運営:Tulip Licensing Ltd(ロンドン)/発表:2026年9月10日(PR Newswire)


 

画像技術の特許は、長らく端末を作る者どうしの間で処理されてきた。カメラ、センサー、スマートフォン。その価値が、いま端末ではなく画像を使う側――SNS、Eコマース、配信のプラットフォーム――に向かい始めている。2026年9月10日に発表された「Tulip Imaging」は、その動きを象徴する。日本のCanon・Sonyと中国のHuawei・OPPOが、125,000件超の特許を一つの窓口に束ねた。しかも対象は標準必須特許(SEP)ではない。


事実関係

Tulip Imagingは、Canon、Sony、Huawei、OPPOの4社が保有する撮像・情報処理の特許を、Tulip Licensing Ltdが窓口となってライセンスするプログラムである。合計125,000件超とされる。公表資料は、対象を標準必須特許とは位置づけておらず、標準化団体やFRAND宣言にも触れていない(Non-SEP)。技術範囲は、視覚情報の撮影・理解・強調・共有(capture, understand, enhance and share)と説明される。最初の対象は、SNSとEコマースの事業者だとIAMは報じている。料率・条件・特許リストは公表されておらず、本件は開始発表の段階である。

ライセンサー

Canon・Sony(日)/Huawei・OPPO(中)の4社

特許件数

125,000件超

性質

Non-SEP(標準必須特許とは位置づけられていない)

対象技術

撮像・情報処理(capture / understand / enhance / share)

最初の対象

SNS・Eコマース事業者(IAM報道)

料率・条件

非公表

運営

Tulip Licensing Ltd(プログラム名 Tulip Imaging)

表 Tulip Imaging の概要(公開資料で確認できる範囲)


1.価値の向かう先が、端末からプラットフォームエコシステムへ移る

従来、画像特許のライセンシーはカメラやスマートフォンの製造者であった。今回の最初の対象は、端末を作らず、ユーザーの画像をサーバ側で処理・配信するプラットフォームである。SEP訴訟の重点が端末メーカーから配信事業者へ移りつつあることは、別稿でも扱った(プール料率は誰が審査するのか)。画像分野でも、価値を画像を使って稼ぐ側から回収する動きが、Non-SEPという形で立ち現れている。


Non-SEPであることが、この転回を可能にしている。標準に紐づかないため、FRAND宣言の枠に縛られず、対象とする実施者の類型も、条件も、権利者側が設計できる。裏返せば、規律の出発点となるFRAND宣言がない。規律は競争法に委ねられ、EUでは2026年5月の改訂TTBERがプールの必須性開示や二重取りの禁止を求めたが、これは必須性を軸にした枠組みであり、Non-SEPの大規模プログラムがどこまで馴染むかは、なお検討を要するであろう。


2.CanonとSonyの名があることの意味

4社のうち、日本のCanonとSonyの参加が目を引く。Canonは米国での特許取得が20年連続で日本企業首位とされ、印刷消耗品では積極的に権利行使してきた(UPCトナー事件で2026年に初勝訴)。ライセンスは二者間・クロスライセンスを基調としつつ、HEVCのSEPプールやQi無線充電プールにライセンサー参加もしている(Canon公表、Via LA一覧)。Sonyはスマートフォン向けを含むCMOSイメージセンサーで4割超の世界シェアを握る撮像の中核企業であり(Yole Group)、同じくHEVC・Qiのプールに名を連ねる。両社にとってプール参加自体は初めてではない。


新しいのは組み合わせである。Canonの強みは光学・撮像・印刷・医用、Sonyの強みはイメージセンサー――いずれも画像を作る側にある。その2社が、スマートフォンの競合であるHuawei・OPPOと同じプールに入り、標的を端末メーカーではなくプラットフォームに向ける。撮影から共有までの鎖を4社で覆い、Non-SEPで束ねて、画像を使う側に差し向ける。加えてSonyは、Pictures・Music・PlayStationという配信・コンテンツ側の事業も抱え、画像を作る側と使う側の双方にまたがる。CanonとSonyの参加は、この設計が撮像の川上企業まで巻き込んだことを示していよう。


3.日中連携という構図

権利者が日本2社・中国2社である点も見逃せない。SEPをめぐる管轄と差止めが法域ごとに分断を深めるなか、日中の主要企業が一つのプログラムで足並みを揃えた。制裁下にあるHuaweiを含む4社が、欧州のTulipにIP収益化を委ねた形である。もっとも、対象とされるSNS・Eコマースには各国の事業者が含まれうるため、この構図を特定国への対抗と読むのは早計であろう。技術面では、Huawei・OPPOのコンピュテーショナル・フォトグラフィ、Sonyのセンサー、Canonの光学が組み合わさり、撮像の全域を覆うポートフォリオになるとみられる。


4.加わらなかったパナソニック

もう一つ興味深いのは、パナソニックが加わっていないことである。パナソニックは運営者Tulipの電池プログラム(Tulip Battery)にはPanasonic Energyとして既に参加しているが、撮像の歴史を持ちながら画像のプログラムには名を連ねていない。電池では入り、撮像では入らなかった。同社は独自の戦略を展開しており、加入する意味を見出さなかったのであろう。


5.まとめ ― 何が結論を分けるか

本件の帰趨は、三点で分かれるであろう。

第一に、条件の公表である。Qi無線充電の紛争では、FRANDの規律が及ぶ範囲は公表・定額、及ばない範囲は非公表・交渉という設計がみられた(Non-SEPs―Qi無線充電紛争が示すもの)。Tulip Imagingは全体がFRAND宣言の外にあり、条件が公表されなければ、実施者は比較の物差しを持たずに交渉に臨むことになる。

第二に、最初の権利行使である。運営者Tulipが先行させた電池プログラムでは、最初の権利行使はドイツで行われた。ミュンヘン地裁(Oliver Schön裁判長)が2025年5月、Sunwodaに対し差止めを命じ、車載電池メーカーへのドイツ初の差止めともされた(JUVE Patent)。画像分野でも、誰に・どの特許で・どの法域で最初に権利を行使するかがプログラム全体の交渉力を規定するであろう。迅速に差止めが出るドイツが、ここでも最初の舞台となる可能性がある。

第三に、Non-SEPは実施者の立場をSEPとは別物にする。SEPは規格に必須であるがゆえに回避できない代わりに、FRANDが差止めと料率を規律する。Non-SEPにはFRANDの規律がない反面、規格に縛られないため回避設計という逃げ道がありうる。実施者の現実的な防御は、FRAND抗弁ではなく回避設計や無効の主張へ移る。差止めの脅威が交渉力に変わるかどうかは、標準による囲い込みではなく、回避設計の可否とポートフォリオの厚みに懸かる。


端末を作る4社が、画像を使うプラットフォームに価値を求め、標準を介さずにそれを行う――ここに本件の新しさがある。SEP紛争の多くは、特許法と競争法の枠内では扱いきれないビジネス問題を含む。Tulip Imagingは、その商業問題をFRANDという枠を外して直接扱うプログラムともいえよう。訴訟と並んで、調停などの合意形成の手段がどこまで用意されるかも注目される。


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※ 本件は開始発表の段階であり、ライセンス条件、ライセンシー、権利行使は公表されていない。Non-SEPという位置づけは、公表資料に標準・FRANDへの言及がないことに基づくもので、個別特許のリストは確認できていない。Canonのライセンス姿勢に関する記述はCanon公表資料等の公開情報に依拠する。IAMの記事は有料部分を確認できておらず、見出し・要旨の範囲で参照した。


参考資料

・Tulip Licensing Ltd「Tulip Unveils Global Imaging Patent Licensing Program」PR Newswire(プレス公表) http://www.prnewswire.com/news-releases/tulip-unveils-global-imaging-patent-licensing-program-302873915.html

・IAM「Canon, Sony, Huawei, Oppo pool imaging patents in new Tulip programme」 https://www.iam-media.com/article/canon-sony-huawei-oppo-pool-imaging-patents-in-new-tulip-programme

・Canon「Technologies and patents related to social infrastructure(標準必須特許・パテントプール)」(当事者公表)https://global.canon/en/intellectual-property/partnership/advance/standards.html

・eeNews Europe「CMOS image sensors: Sony heads towards 50% market share」(Yole Group調べ) https://www.eenewseurope.com/en/cmos-image-sensors-sony-heads-towards-50-market-share/

・JUVE Patent「Hogan Lovells and Tulip land sales ban against Sunwoda’s car batteries」2025-05-30 https://www.juve-patent.com/cases/hogan-lovells-npe-tulip-sales-ban-against-sunwoda/





 
 
 

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