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東京地裁中島基至判事 「IP業界で今年影響力のあった50人」に 50 Most Influential People in IP 2025 in Managing IP

東京地方裁判所の中島基至判事が、英国の国際IP専門誌「Managing IP」の「The 50 Most Influential People in IP 2025」で50人の一人に選出された 。


Managing IP(本文は有料)の記事:

50 most influential people in IP 2025: Motoyuki Nakashima

Nakashima is the presiding judge of the IP Division at the Tokyo District Court in Japan


同誌はロンドンを拠点とするIP業界の「プレミアム」メディアの一つで、IAM 、WTR 、Managing IPという国際IP業界の「三大ランキング誌」といわれる。毎年年末に「50 most influential people in IP」を「2025年にIP法・政策・ビジネスに最も影響を与えた人物」を選出する。その対象は裁判官、特許庁長官、企業の知財責任者、著名な弁護士など、国際的なIPシーンを動かすキーパーソンが中心になる 。


中島判事は、2025年にPantechがGoogle(Pixel 7)およびAsusを相手取ったSEP(標準必須特許)訴訟において、日本初のSEPに基づく差止めを認容した裁判長として知られている 。

この判決では、Googleが「unwilling licensee(不誠実な実施者)」にあたると認定し、FRAND交渉の枠組み内であっても、差止め請求が権利濫用にあたらないとした 。

Managing IP誌は、中島判事を「日本におけるSEP裁判の実務を形作り、国際的なSEP議論に再び日本を参加させた存在」と評価している 。


【筆者解説】

この選出は、日本SEP環境が久々に国際的なIP議論で再び注目された重要なシグナルと捉えることができる 。

Pantech対Google・AsusのSEP差止め判決は、長年「差止めは権利濫用」として抑制的だった日本のSEP裁判実務に転換点をもたらしたのではないかと海外から注目されている。

Managing IPが中島判事を選んだ背景には、「日本がSEPルール形成に再び実質的に関与し始めた」という評価があると考えられる 。

ただし、unwillingnessの判断基準については、2014年知財高裁大合議判決(Apple v. Samsung)の枠組みが踏襲されており、法理の根幹では大きく踏み出しているとは言いにくい 。

判決はむしろ、両当事者の交渉が平行線をたどった後、裁判所が「大合議方式で和解案を出せ」と勧告したにもかかわらず、Googleが販売台数・販売額を開示せず、和解案を出さなかった点を「自らライセンス交渉の余地をなくした」として、unwillingnessの決定的要因とした 。「裁判所の和解勧告・調停に非協力的だった」ことをunwillingnessの決定的要因としたことで、2014年判決で抽象的であったunwillingness概念を実務的に具体化した点が、中島判決の主な貢献とみるべきだろう 。


このように考えると、中島判事の選出は、「日本SEPが国際的に再び注目された」という前向きな意味はあるが、「2014年判決から大きく踏み出した」とまでは言えない、やや控えめな評価が適当だろう 。


今後は、知財高裁判断が中島判決の差止め論理を維持するか、あるいは2014年判決の枠組みを維持するかが、日本SEP裁判の方向性を見る鍵になるだろう 。

 
 
 

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