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(欧)EUが中国のASI(訴訟差止命令)についてWTO手続開始 EU challenges China's ASI at WTO

更新日:2022年2月23日

昨日18日EUは中国のASI運用を不服としてWTOに調査手続をとった旨のプレス発表を行った。https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_1103 

本件についてはEUは昨年の情報開示要求が頓挫後も中国とさまざまな交渉を続けてきたが、解決の糸口が見えず、今回のWTOへのConsultationの手続き(dispute settlement consultation)に至ったと述べる。EUがWTOに提出した”Request for Consultations by the European Union” https://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2022/february/tradoc_160051.pdf が今回WTOに申し立てた理由を詳細に述べている。


EUは5つの中国判例におけるASIが中国最高人民法院の判断に裏づけられており、最高人民法院はWorldwide ASIを支持し、かつそれを2020年の十大判決に取り上げ、全国の裁判所の規範となっていると指摘している。5つの判例とは次の通りである。

  • Huawei v. Conversant(最高人民法院)2020年8月28日判決。ドイツデュッセルドルフ裁判所での差止判決に対して中国最高人民法院がASI(禁訴令)を出し執行取り下げをConversantが行わない場合には毎日15.6万ドル相当(1800万円)が累積してゆく判決をおこなった。

  • Xiaomi v. InterDigital事件(武漢中級人民法院)2020年9月23日ASI判決

  • ZTE v. Conversant事件(深圳中級人民法院)2020年9月28日ASI判決 デュッセルドルフ裁判所差止判決の執行停止

  • OPPO v. Sharp事件(武漢中級人民法院)2020年10月16日ASI判決、2021年8月19日最高人民法院はOPPOの主張を認める判決。

  • Samsung v. Ericsson(武漢中級人民法院)2020年12月25日ASI判決。エリクソンは中国以外での提訴を禁じられる。

最高人民法院はさらに深圳中級人民法院の求めに応じ、SEPのグローバルレートを決める権限が深圳中級人民法院にあることも認めている事実から、EUは権利者が中国以外の裁判地で救済を求めることを妨げ、中国以外の裁判地における判決執行を妨げることになると問題視している。同文書には中国でASIに適用されたさまざまな中国法律、法令を引用し検討している。


EUによれば中国の今回の措置は、

  • TRIPS協定(28条1項)が認める知財権の権利行使を阻害し、外国裁判地で争う機会を排除することでTRIPS協定(28条2項)が認めるライセンス契約の締結を締結する権利を奪っている

  • TRIPS協定(41条1項2文)知財権の侵害行為への措置を(中国国内法が)妨害するもので正当な貿易の障害となっている。

  • TRIPS協定(1条1項1文、44条1項)侵害品に対する各国が有する差止命令を排除する。

  • 中国加盟文書2(A)(2)は外国訴訟提起に対する中国民事訴訟法の巨額の課徴金を正当化するものでない。

(参考)TRIPS協定翻訳は特許庁サイトにあるhttps://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/trips/chap4.html


さらに、EUは中国側の行為を以下のように問題視している。

(1)情報開示の不備

 たとえば中国最高人民法院十大判決と発表されているうち、3つしか公開されていない。

 2021年7月6日EUはASI判決に関する情報開示が不十分として、TRIPs協定第63条第3項に基づき、上記5つの判例について情報提供要請を行った。これに対して中国は同年9月7日にTRIPS協定の開示義務の対象ではないと回答しているが、これはTRIPS協定63条1項違反である。

(2)情報提供する意思の欠缺 今後の手続きであるが、まずEUと中国がWTO紛争解決手続の2者間協議に入ることになる。しかし、60日間に解決できなかった場合にはEUはWTOパネル(小委員会)に付託することができる。このパネルの判断に不服の場合にはさらに上級委員会に申し立てできる。

今回のEUによるWTO申し立ては大きなニュースとして欧州発で多くの報道がなされている。

  • Financial Times記事(2月18日付)https://on.ft.com/36uln8N

今回EUがさらに強い措置に至った背景は、2020年8月以来の中国におけるあいつぐASI判決により欧州企業(Nokia, Ericssonなど)はじめ米国InterDigital、日本のSharpも中国企業との著しく不利なライセンス交渉に追い込まれ、不利益な条件の和解を余儀なくされていることを憂慮していることが背景にある。中国でASI判決を出されると欧州での判決が執行停止になるほか、欧州での対抗・並行訴訟に対しては中国で巨大な罰金(たとえば€130,000、約1700万円が毎日累計課徴される)などが発生している。また、最近のエリクソンのケースではASIにより強いられた和解で同社は四半期ベースで€100mn-€150mn(日本円で130-200億円)を損失したと言われる。EUは今回の問題に関する強い決意を述べる傍ら、今回のWTO手続きに米国、日本からの支持を期待するとそのプレス発表に述べている。

今回の措置に対して、中国商務部は遺憾の声明を18日に発表している。


(参考)二つのSEP研究会関連の過去ブログ記事


Photo: Unsplash, Christian Lue

 
 
 

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